じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

アイヌ関連のイベント・講座・展覧会

日本政府がアイヌを日本の先住民として正式に認めたのは、つい2年前の2008年6月のこと。折口信夫をはじめこれまでは日本文化の起源を南方に求める例が多かったのですが、今後は縄文文化との関連という面でも、アイヌへの注目がますます深まっていくのではないでしょうか。またスカンジナヴィアの北方民族サーミ(サーメ)の喉歌ヨイクを聴いていると、シベリア先住民やアイヌの音楽と共通したものを感じ、北を経由して(アラスカ、カナダ以南までも)伝播した文化ルートについて思いが膨らみます。

2009年に逝去された谷本一之氏は、アイヌからユーラシア、北米、グリーンランドまで、北方民族の音楽文化を広く研究し、2000年刊行の著書『アイヌ絵を聴く――変容の民族音楽誌』(北海道大学図書刊行会)は第54回毎日出版文化賞を受賞しています。

同書の価値をさらに高めているのが、付録CDの存在です。1903〜05年の蠟管によるB. ピウスツキ録音、1923年のワックス円盤による田辺尚雄録音、1931年の蠟管による北里闌(きたさと たけし)録音、1934〜36年のアルマイト、ベークライト円盤による久保寺逸彦録音、1950年代のコロムビアレコードによるSP盤の録音、といったアイヌの古い音の記録、そこに関連音資料として1979年(カナダ・イヌイット)と1992年(シベリア・チュクチ)の谷本氏自身による現地録音「大陸の喉鳴らし」を加えた全20トラック。

当財団でも、貴重な音源によるアイヌ関連のCDをいくつか発売しております。アイヌ文化の啓蒙に生涯を捧げた萱野茂(かやの しげる)氏に関連したものを始めとして、昭和28年から51年にかけて録音された音源を集めた3枚組CD『アイヌ・北方民族の芸能』も注目すべき内容です。このところ、最も高額な『萱野茂アイヌ神話集成』(定価15万) のご注文が数件あってどうしたことかと思っていたら、ちょうど興味深いアイヌ関連のイベント・講座・展覧会が連続して開催されることに気がつきました。遅まきながら以下、ご紹介させていただきます。


上述した谷本一之氏が理事長を務めていた財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構が主催して毎年秋に東京で行なっている大きなイベントアイヌ文化フェスティバル」が、今週土曜日10月2日、有楽町の東京国際フォーラムで開催されます。講演、口承文芸、音楽や舞踊の公演、その他会場内では工芸品の展示や制作の実演なども行なわれ、それでいて入場は無料。ぜひこの機会にお出かけになって、アイヌ文化と触れ合っていただければとおもいます。(ご来場者全員にアイヌの伝統楽器ムックリのプレゼントもあるそうです。)

アイヌ文化フェスティバル」
日時 2010年10月2日(土) 13:00〜16:00
開場 12:00 開演 13:00
会場 東京国際フォーラム ホールC
入場無料
主催:財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構
後援:国土交通省文化庁、北海道、北海道教育委員会、社団法人北海道アイヌ協会


つぎは、明治大学リバティアカデミーにおける「アイヌ」をテーマにした連続講座のご案内です。アイヌ民族の文化と歴史について、専門の講師陣がさまざまな観点からふりかえる大変充実した内容となっています。どなたでも参加・聴講は可能ですが、事前の申込みが必要です。締め切りが10月1日(金)と明日に迫っていますが、急いでご紹介させていただきます。下記の明治大学のサイトではWEB上での申込みもできるようです。

アイヌ民族の文化と歴史をふりかえる」(全6回、毎週土曜日15時)
開講日:2010年10月9日/16日/23日 11月6日/13日/20日(毎週土曜日)
申込み締め切り日:10月1日(金)
場所:明治大学駿河台校舎アカデミーコモン11階
受講料:全6回18000円(新規会員の方は別途入会金3000円)
申込み先:明治大学リバティアカデミー事務局
TEL:03-3296-4423


現在、川崎市市民ミュージアムではアイヌ−美を求める心」という展覧会が開催されています。美術館の紹介文によれば、「北海道白老の財団法人アイヌ民族博物館所蔵の貴重なコレクションから300点を厳選して、近世・近代のアイヌ民具・工芸品のもつ美術的な側面を紹介します。また、当会場では、特別展示として、尾張徳川家関係資料のなかから、木彫熊ならびに八雲(ユーラップ)アイヌの民族資料を初公開します。」とのことです。貴重な工芸品が出品されているようなので、こちらも注目です。

アイヌ−美を求める心」
開催期間:2010年09月18日〜2010年11月07日
料金:一般 300円 学生・65歳以上 100円 中学生以下 無料
主催:川崎市川崎市市民ミュージアム/(財)アイヌ文化振興・研究推進機構
後援:国土交通省文化庁/北海道/北海道教育委員会/神奈川県教育委員会川崎市教育委員会/社団法人北海道アイヌ協会


当財団のアイヌ関連作品はこちらをご覧ください。

(堀内)