じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「能楽師」

先週投稿した映画「能楽師 伝承」から遡り、先日DVD「能楽師を手に入れて観ていました。

能楽師」(田中千世子監督、発売:ワック株式会社)
観世流能楽師・関根祥人(よしと)師とその父・関根祥六(しょうろく)師の姿を通して、かけがえのない能の世界を収めた素晴らしいドキュメンタリー。佐野史郎さんがナレーションする「風姿花伝」を目でも追ってみたくなり、以前手に入れた写真にある岩波文庫を引っ張り出しました。
心構えとしての「一調、二機、三声」という世阿弥の話を分かりやすくするため、100メートル走のスタートラインでいきなり「ドン」ではなく、「“位置について”があって、“よーい”があるから、“ドン”」でスピードが出せるような、内側の意識が大事なんだという深いお話。高校の部活動で陸上競技の短距離を走っていたことがある自分にとって、その瞬間瞬間に覚悟をもって臨む心意気として身近に感じられ、うれしくなりました。惜しくもこの世を去った祥人師の素晴らしい舞はもちろんのこと、作品の終盤に祥人師が華麗にサッカーボールをさばく姿もとても印象的でした。

600年ほど前の偉人、世阿弥が著した「風姿花伝」の世界が今もたしかにあり、ありとあらゆるパフォーマンスをすでに本質的にとらえていたのだということを、今さらながら気づかされる素晴らしい映像でした。

(じゃぽ音っと編集部T)