じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

音楽に関する展覧会2つ

今日も暑い一日でした。こう暑いと、休みの日は海やプールにでかけるより冷房のきいた屋内ですごすほうがうれしいという方も多いことでしょう。そんな方のために、邦楽と関わりの深い展覧会をご紹介しましょう。

東京都港区虎ノ門ホテルオークラ正面玄関前にある大倉集古館(おおくらしゅうこかん)をご存じですか? ホテルを利用しても案外気づかない方が多いようです。
大倉集古館は明治から大正時代にかけて活躍した実業家・大倉喜八郎(1837〜1928)が大正6年(1917)に設立した、日本で最初の私立美術館です。なんとなくホテルの付属施設のように思っていましたが、ホテルの創業は昭和37年ということですから、意外にも美術館のほうがずっと古いんですね。
喜八郎亡きあとは長男の喜七郎が意志を継いでさらに収蔵品を充実させ、日本をはじめ東洋各地域の絵画、彫刻、書跡、工芸などの名品が収められています。
その大倉集古館でいま開かれているのが、大倉喜七郎と邦楽」「美術に視る音色」の2つ展覧会です。
会期は2011年8月2日(火)〜9月25日(日)、開館時間は10:00 〜 16:30(入館は16:00まで)。入館料、休館日など、詳しくはこちらをご覧ください。→【大倉集古館】展覧会・イベント
この大倉集古館のサイトでは、次のように紹介されています。

大倉喜七郎と邦楽—“幻の竪笛”オークラウロを中心に—」
大倉財閥の2代目で、バロンの愛称で親しまれた喜七郎(1882〜1963)にゆかりの深い邦楽関係の資料を展示します。喜七郎は大正末期から昭和初期にかけて、今までになかった新しい日本の音楽を志向し、尺八にフルートのベーム式キーシステムを取り入れた新楽器「オークラウロ“Okraulo”(もしくはオークラロ)」の考案・制作を手掛けたほか、伝統的な三味線音楽に西洋音楽の歌唱法などを取り入れた「大和楽」を創始するなど、日本の伝統音楽と西洋音楽の長所を併せ持つ音楽の創生を試みました。本展覧会では、現在では幻の楽器ともいわれる「オークラウロ」について、当時使われていた楽器や制作の過程における試行錯誤を物語る楽器の試作品、「オークラロ楽団」の関連資料などを中心に展観します。
また、「大和楽」が今日まで受け継がれ、更なる発展を続ける活動の一端をご紹介いたします。ほかに、当時、美術・音楽をはじめとする文化のパトロンとして異才を放った喜七郎の人物像を偲ばせる自筆の詩軸や愛用品等を展示いたします。
  
「美術に視る音色—描かれた楽器たち—」
美術を前にして、人は時に視覚以外の様々な感覚をよび起こされることがあります。しばしば視ることによって聴くというような経験しますが、もちろん描かれた楽器や奏者が音を奏でることはありません。音楽を耳で聴くのではなしに、目から得た情報により聴こうとするのはなぜなのでしょうか。過去に聴いた音楽の再現、もしくは理想の音楽の構築、更には想起される様々な物語の一場面の追体験など。そこには当然ながら人の記憶を背景とした豊かなイマジネーションが介在します。
本展では、当館の日本・東洋美術コレクションの内、画中に楽器が描かれた絵画作品を中心に展観いたします。

大倉喜七郎は美術収集のほか、オペラ歌手・藤原義江を支援するなど音楽にも並々ならぬ情熱をもっていたそうですが、各種スポーツにも趣味が広く、スキーの大倉山ジャンプ場(札幌)は、喜七郎が私財をなげうって整備したことから、敬意を表して「大倉」と名付けられたのだそうです。新しい楽器や音楽を創ってしまうところといい、スケールが違いますね。

この展覧会に関連して、8月27日(土)18:00から、大倉集古館内で大和楽の特別公演が予定されています。こちらのブログに詳しい情報があります。→大和楽公式ブログ:大倉集古館『大和楽特別公演』 - livedoor Blog(ブログ)

「美術に視る音色—描かれた楽器たち—」で展示される主な作品は、狩野常信「松に琴・紅葉に琵琶横笛図」、鈴木其一「宮女奏楽図」、鏑木清方「七夕」、伊東深水「小雨」など。音楽と美術を愛した喜七郎のめがねにかなった佳品が楽しめます。

 
なお、ホテルオークラの別館「アスコットホール」では、8月28日(日)まで「第17回 秘蔵の名品 アートコレクション展 日本絵画の巨匠たち 文化勲章受章作家の競演」という展覧会が開かれています。→http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/special/art11/
こちらは戦前から平成までの日本を代表する巨匠たちの作品を一堂に集めたもので、美術好きの間で評判になっています。実はこのなかに、当財団員Mのおじいさまの作品も含まれています!
大倉集古館の展示との共通入場券があるそうなので、併せて鑑賞するのもオススメです。

(Y)