じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

伎楽−日本伝来1400年/東北の芸能

 
今月初めに薬師寺花会式に行ってきてから(過去ブログ記事→ 2012年4月4日「薬師寺 花会式」)、大伽藍復興までの軌跡をまとめた非売品VHSビデオ『大伽藍復興35年の軌跡 甦る白鳳の輝き 薬師寺を見たり、薬師寺への関心が持続しているのですが、今年の6月に国立劇場小劇場で薬師寺関連のひじょうに興味深い催しがあります。また6月の国立劇場では、東日本大震災復刻支援「東北の芸能 I 〔岩手〕」も注目公演です。これらについてご紹介します。


まずは、「伎楽−日本伝来一四〇〇年」。6月2日(土)国立劇場小劇場、午後2時開演と午後5時開演で、それぞれ異なる公演内容となります(入場料も別々)。

【2時開演】
薬師寺玄奘三蔵会 ―伎楽法要―
 練供養、惣礼
 四箇法要  唄・散華・梵音・錫杖
 表白
 大般若経転読、読経
 新伎楽「三蔵法師求法の旅」

声明  法相宗大本山 薬師寺
伎楽  天理大学雅楽
     茂山良暢(玄奘三蔵

入場料金(全席指定・障害者の方は2割引)
一般 4,500円 学生 3,200円
詳細情報→

こちらはチラシに掲載されている紹介文です。

伎楽は、日本書紀によれば推古20(612)年、百済味摩之(みまし)が日本に伝え、聖徳太子が仏教教化のために奨励したことで飛鳥から奈良時代にかけて全国の寺院の法会で盛んに行われたといいます。しかしその役割は徐々に雅楽へと移行し、鎌倉時代には廃れてしまいました。法相宗大本山薬師寺では、平成4年より法相宗の始祖玄奘三蔵の月祥日である5月5日に玄奘三蔵会を修しています。平成3年に玄奘三蔵院伽藍建立を機に翌年より復興された法要で、薬師寺の年中行事を元に始祖玄奘三蔵を顕彰するにふさわしい次第で構成されています。この法要で伎楽が演じられます。演じるのは昭和55(1980)年の東大寺大仏殿昭和大修理落慶法要の際に復元された伎楽をもとに作られた新伎楽「三蔵法師求法の旅」です。



【5時開演】
伎楽 ―幻の天平芸能を知る―
 お話 伎楽とは  佐藤浩司天理大学人間学部教授)
 伎楽
  行道/師子/呉公/金剛/迦楼羅/婆羅門/崑崙/力士/太孤/酔胡

天理大学雅楽

入場料金(全席指定・障害者の方は2割引)
一般 3,600円 学生 2,500円
詳細情報→

チラシに掲載されている紹介文です。

幻の天平芸能と言われていた伎楽が、昭和55(1980)年の東大寺大仏殿昭和大修理落慶法要の際に堀田謹吾氏の企画により、復曲を芝祐靖氏、振付を東儀和太郎氏、衣裳を吉岡常雄氏、監修に小泉文夫氏・笠置侃一氏を迎え、天理大学雅楽部が演じることでその一部が復元されました。天理大学雅楽部ではその後も芝氏の協力を得ながら伎楽復元に励み、平成2年、ついに古書に記された全ての伎楽曲を復元しました。この伎楽について昭和55年の復元から携わっている佐藤浩司氏(天理大学教授・雅楽部顧問)の解説をお聞きいただいた後、伎楽をご覧頂きます。行道に始まり、師子・呉公・崑崙・金剛・力士・婆羅門・迦楼羅・太孤・酔胡と古書に記される天平の舞が国立劇場の舞台で蘇ります。

芝祐靖さんが復曲した伎楽は、今年1月26日に新宿区の四谷区民ホールで開催された、伶楽舎の雅楽コンサート「芝祐靖作品演奏会 その2」でも「呉女」、「崑崙」、「迦楼羅」が演奏されていましたが、以前これらの曲を収録して1992年にコロムビアから発売されていたCD『(日本の音)天竺からの音楽/クラル・龍笛神楽笛:芝祐靖』(COCF-10381)が、今年2012年1月に20年ぶりに復刻されました。タイトルは『天竺からの音楽/芝祐靖』(COCJ-37173)。ジャケットが変わってしまったのが残念ですが、これは本当に素晴らしいCDなので、復刻の英断を下したコロムビア社に深く感謝したいと思います。品切になる前にぜひ入手されることをお薦めします! 収録内容は以下。

1. ヴァーユ(風の神) Vāyu/芝祐靖作曲
2. 〔伎楽〕行道乱声 Gyodō-ranjō : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
3. 〔伎楽〕迦樓羅 Karura : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
4. 〔伎楽〕崑崙 Konron : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
5. 〔伎楽〕 呉女・序 Gojo : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
6. 〔伎楽〕 呉女・破〈伝渡羅拍子〉 Gojo : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
7. 〔伎楽〕 呉女・急〈唐拍子〉 Gojo : gigaku/芝祐靖作曲・編曲
8. 「長秋竹譜」より 元歌 Genka/芝祐靖訳譜
9. 安摩乱声 Ama-no-ranjō
10. 縒合 Yoriai
11. 朝倉音取 Asakurano-netori
12. 白瑠璃の碗 Hakururi-no-wan/芝祐靖作曲


 
そして6月23日(土)に国立劇場小劇場で開催されるのが、東日本大震災復刻支援「東北の芸能 I 〔岩手〕」です。こちらも、午後1時の部と、午後4時の部の二公演で、それぞれ内容が異なりますが、セット券も販売されています。(入れ替え制なので、座席は1時と4時の部それぞれで違う席になります)

【1時の部】
釜石 鵜住居虎舞(うのすまいとらまい)【鵜住居青年会】
大船渡 板用肩怒剣舞(いたようかたいかりけんばい)【板用肩怒剣舞保存会】
遠野 青笹しし踊り(とおのあおざさししおどり)【青笹町しし踊り保存会】
宮古 黒森神楽 シットギ獅子(くろもりかぐら)【黒森神楽保存会】

【4時の部】
国指定重要無形民俗文化財
黒森神楽【黒森神楽保存会】
打ち鳴らし/清祓い(きよはらい)/榊葉(さかきば)/松迎(まつむかえ)/山の神舞(やまのかみまい)/恵比寿舞(えびすまい)/節分(せつぶん)

入場料金(全席指定・障害者の方は2割引)
各一般 3,000円 学生 2,100円
※1時の部・4時の部セット料金 5,500円
詳細情報→

当ブログの過去記事(2011年12月18日「東日本大震災を乗り越えて」)でも、地域における民俗芸能が果たす意味について言及されていました。本来、芸能と生活は一体であるべきもので、それが切り離されてしまったら、おそらく、芸能も生活も、どちらも根腐れしてしまうのではないかと思います。

この東北の民俗芸能を特集するシリーズは今後も継続して開催されるとのこと。このシリーズが被災地の方々との交流の場となり、わたしたち観客にとっても、東北の地で暮らす方々の存在をより身近に感じ、生活と芸能が結びついた社会の豊かな在り方をまなぶことのできる貴重な機会になればと思います。

6月の国立劇場公演「伎楽」も「東北の芸能」も、チケット発売は先週でしたが、早くも残席はわずかとの情報も・・・。ご関心のある方はチケットの手配をお急ぎください。

(堀内)