じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

モダン・デザインの父〜ウィリアム・モリス

ウィリアム・モリス展 〜ステンドグラス・テキスタイル・壁紙 デザイン〜」を先日訪れました。場所は兵庫県明石市立文化博物館。11/11まで開催されています。下は博物館の外観ですが、右下の方に明石市立天文科学館が見えます→日本標準時・明石市立天文科学館 - じゃぽブログ

http://www.akashibunpaku.com/access/index.html
http://www.akashibunpaku.com/exhibition/?id=10
次の説明は上掲URLからの引用。

19世紀後半のイギリスで、多彩な才能を発揮させたウィリアム・モリス(1834-1896)。彼は、工芸家、画家、詩人、出版人、そして社会主義思想家として幅広く活躍しました。なかでも、産業革命後の急激な工業化のなか、モリスがデザインした室内装飾は、身近な芸術として市民の生活に受け入れたことで知られ、「モダン・デザインの父」と讃えられます。自然の草花や鳥のモチーフ、流麗な線、美しい色彩、細やかで丁寧に仕上げられた手仕事は、100年以上経った今も愛され続けています。
本展は、フィルムで再現したステンドグラス約20点をはじめ、モリスや彼の仲間たちのデザインによる壁紙、テキスタイルや家具、書籍など、英国の気品あふれる約80点で構成されます。とりわけ、友人の画家バーン=ジョーンズらと手掛けた教会のステンドグラスは、モリス初期の仕事として、あまり紹介されていないめずらしいものです。生活の隅々にひろがるモリスの世界を、ぜひこの機会にお楽しみください。

クラシックの作曲家でいえばブルックナーと同じ年に亡くなっているわけですね。ステンドグラスはよく工夫されて展示されていましたが、やはり現地の教会へ行って鑑賞したいものでした。壁紙ではカラフルなものより二色程度のシンプルなデザインに目を瞠るものがありました。
アーツ・アンド・クラフツ運動の主導者であるウィリアム・モリスは、産業革命の結果、大量生産によって安価だが粗悪な商品であふれている生活環境を嘆き、中世の手仕事に回帰して生活と芸術を一致させようという理想を掲げました。
理想を現実化するために、1861年にモリス・マーシャル・フォークナー商会を創設し「住居・教会・公共建築用の壁面装飾や彫刻、壁面装飾との調和に留意したステンドグラス、宝飾をも含む金工、家具や一切の生活必需品や装飾」といった制作範囲を掲げて様々な装飾制作を意欲的に開始します。
今回の展覧会にはありませんでしたが、「もし私にできるなら "If I can" 」という掛け布の作品では、自ら刺繍を刺してモットーを示したようです。数々の室内用の壁紙の制作にあたっては、あの細かい植物模様が手仕事による木版画ですよ! 機械によるプリントの壁紙模様と違って引き込まれるような味わいがあります。
けれども手仕事にこだわって理想を現実化させるためには、本人には相当な仕事量がかかったはずです。1896年に生涯を閉じたモリスの主治医は、死因を聞かれて、「社会主義の理想を広めようという熱意の犠牲」、別の医師は「病名ウィリアム・モリス、一人で十人分以上の仕事をしたため」と語ったとされています。
当財団のCD『ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声』シリーズ(VZCC-1028〜1041 全14枚) のジャケットは、ウィリアム・モリス1875年の作品である「アカンサス」という壁紙をベースにデザインされています。最新のデジタル技術によって貴重なSP音源の針音ノイズを除去することに成功して蘇った歌声の主達は19世紀末から20世紀前半に活躍した伝説的な歌手達で、ちょうどモリスを始めとしてアーツ・アンド・クラフツ運動が広がっていった頃の時代の歌声ですね。
そろそろ11月、クリスマス用にこちらの作品はいかがでしょうか→じゃぽ音っと作品情報:ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声 1 聖なる響き

全14枚、各盤の曲目も掲載されたホームページへのリンクはこちら→『ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声』シリーズ(VZCC-1028〜1041)
『伝説の歌声』シリーズ完結 - じゃぽブログ


博物館を出るときには綺麗な夕焼け空になっていました。最後にモリスの言葉を。「有用とも美しいとも思えないものを家の中に置いてはいけない。」

(J)

参考文献:『ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』藤田治彦著(東京美術