じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

石橋の世界

先週2月1日(金)のNHKEテレ芸能百花繚乱(22:15〜22:58)では、「石橋の世界」がテーマだったそうですね。私は、見る事ができなかったのですが、再放送が明日2月8日(金)午後0:15〜からあるそうですので、見逃した方はチャンスです!
獅子の芸能として有名な「石橋」(しゃっきょう)。獅子の芸能は、バリ島のバロンダンスなど、東洋の各地で見られるそうですが、日本の伝統芸能でも獅子に関係したものがたくさんあります。
(早速ですが、バリ島の映像は◆こちらでご覧いただけます♪)
お正月やお祭りで見られる獅子舞の起源は、インド地方と言われているそうです。日本へは、中国、朝鮮半島、東南アジア・台湾・琉球などのルートを経由して伝えれられ、それぞれの地域で郷土芸能として定着し、各地で様々な舞をみることができます。
さて、百花繚乱で取り上げられた「石橋の世界」は、能の『石橋』に由来するものですね。(まだ見ていませんが…。)大江定基(おおえのさだもと)は、恋仲になった姫が亡くなり、世の中の無常を感じて出家しました。寂昭法師(じゃくじょうほっし)と号し、中国・インドの仏跡を巡る旅を続けていると、中国の清涼山で石の橋に近づきます。これこそ有名な石橋で、橋を渡った向こうは文殊菩薩の浄土。
法師が橋を渡ろうとすると一人の童が現れ、それを引き止めます。この橋は幅一尺もなく(30cmくらい)、苔に覆われて滑りやすく、何千メートルという谷の深さを見れば足がすくみ、並の修行者では渡れぬ橋だと説き、ここで待っていればやがて文殊菩薩が現れるだろうと言って童は立ち去ります。法師が待っていると獅子が現れ、咲き誇る牡丹の花に戯れ、雄壮な獅子舞を舞います。獅子は、釈迦如来の脇侍である文殊菩薩の乗りものなのだそうです。
能『石橋』のみどころは、絢爛豪華な舞です。

◆こちらのDVDには、半能『石橋』が収録されています。(童が石橋の謂れを語る前段は省略されています。)
そして『石橋』のキーワードは「♪獅子團乱旋の舞楽の砌」(ししとらでんのぶがくのみぎん)でしょうか。この詞章がくると「キターー」という感じになります。(個人的な感想ですが…)「獅子」も「團乱旋」も舞楽の名前だそうです。(「獅子と螺鈿」かと思っていました〜)
地謡〕獅子團乱旋の舞楽の砌。獅子團乱旋の舞楽の砌。牡丹の英匂ひ充ち満ち。大筋力の獅子頭。打てや囃せや牡丹芳。牡丹芳。黄金の蘂現れて。花に戯れ枝に伏し轉び。げにも上なき獅子王の勢ひ。靡かぬ草木もなき時なれや。萬歳千秋と舞ひ納め。萬歳千秋と舞ひ納めて。獅子の座にこそ直りけれ。
長唄では、『勝三郎 連獅子(勝連)』1861年初演)、『正治郎 連獅子(正連)』(1872年初演)などにも、やはり♪獅子團乱旋〜が出てきます。

能も長唄も、囃子方の緊迫感と迫力が聴きどころで、途中に太鼓と小鼓だけで演奏する「露ノ拍子」という部分があります。深山幽谷の描写でしょうか。実際の演奏会場では静寂の中で、小鼓の紐(調緒)をググッと締める音が聞こえてきます。
歌舞伎で見ることの出来る『連獅子』では、親獅子が子供の力を試すために清涼山の谷底に蹴落とし、子獅子は必死に駆け上がってくるという故実を含む内容になっていて、親獅子と子獅子が長い毛をぐるぐると回します。実際に歌舞伎役者さんの親子で演じられる事もあるそうで、芸の伝承を感じる演目とのことです。
地歌にも『石橋』があります。◆こちらのCDに収録されています。

また「石橋物」ではない「獅子物」もありますが、いずれも千秋万歳を祝う内容となっています!♪獅子團乱旋〜、是非チェックしてみてください!

(制作担当:うなぎ)