じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

小学校:伝統文化教室

去る1月末、都内の公立小学校の授業の一環で『伝統文化教室』が開かれ、公益財団法人・日本三曲協会による邦楽の学校コンサートが催されました。日本三曲協会は邦楽文化の発展を図ることを目的としてさまざまな活動をしており、その一つに学校への「出張演奏」があります。すでに25年以上(昭和61〜)この活動をされているそうです。この日は公開授業で、地域住民や児童の父兄も可ということでしたので、参観してきました。

※ 日本三曲協会HPです。とても内容が充実しています。 日本三曲協会|箏・尺八・三味線など協会活動

日本三曲協会には多くの邦楽演奏者の方が所属しておられ、その中で複数のチームを組んで都内の学校を廻っていらっしゃいます。今回、いらしたのは、宮城社大師範の佐野奈三江さんを筆頭に、青木麻衣子さん、岡本慎太郎さん、遠藤鈴匠さん。箏・尺八・三弦によって以下の曲目が演奏されました。

さくら変奏曲/若水/春の海/琉球民謡による組曲/こきりこ節/となりのトトロ/メドレー(わらべ歌、日本民謡)等


※ 当日は体育館が会場となり、入口には下の財団のCDジャケットも置かれました。さくら変奏曲、春の海はこちらで聴けます。
◆〈COLEZO!〉〜コレゾ!BEST!〜宮城道雄

さて、会場では6学年を二つにわけ、演奏を2回することにより、より多くのこどもたちが演奏者の近くで音楽を聴けるよう工夫されていました。わたしの関心は、小学生のこどもたちの反応です。開始時刻に近くなると、会場となっている体育館にぞくぞくとこどもたちが入ってきます。こどもたちの背丈を超える大きさの箏がいくつも横たわっているのを見て、びっくりしたように「あれなんだ?」とつぶやく児童の声も聞こえ、最初のインパクトは上々です。

演奏の前と合間に、佐野先生が楽器や曲の解説をなさったのですが、それがとにかく平易でわかりやすい表現で感心して拝聴しておりました。例えば箏の楽器としての説明であれば、いくつの弦が張ってあり、裏側はどうなっているのかを児童へ時々質問投げかけながら実際に見せていきます。専門用語を避け、三味線の説明では「大きく分けると三味線には3つあり、サイズが違います。ここにあるのは中くらいの物です。」といった風に、初めて知るこどもが「小難しい」と感じないよう、細部まで気が遣われていたと思います。

そして演奏が始まってからのようすです。低学年では退屈してもぞもぞ動き始める子がいるかもしれないと思っていたのですが、予想に反し、最後までこどもたちはじっと行儀よく聴いていました。中でも皆の親しみのあるジブリの「となりのトトロ」では、体育座りをしたこどもたちが一堂に体を揺らして曲に「のって」いたのは、後ろから見るわたしの目に、本当にほほ笑ましいものでした。

演奏後、大人の観客の方の一人と言葉を交わしましたのですが、その方は「初めて聞いたけれど美しい音色でびっくりした。本当に良かった」と言っておられました。それもそのはず、今回学校にいらした演奏家の方々は、最高レベルの音楽教育機関で勉強され、第一線で活躍されている方ばかり。初めて邦楽を生で聴く児童(大人も)も多かったと思われますが、今回いい音・いい演奏を楽しんだことで、それがよい体験となり次につながっていくのではないかと感じています。

最後になりましたが、岡村慎太郎さんは弊財団の実施している邦楽技能者オーディション合格者としてCDを出しております。合わせてご紹介させていただきます。

◆地歌箏曲/岡村慎太郎(第11回邦楽技能者オーディション合格者)

(弘)