じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

『色気も濃すぎちゃ野暮でげす』

今年の2月3日にブログで紀伊国屋ホール、落語会&トークショーについてレポートいたしました。こちらにご出演されていた扇よし和さんの著書が気になり、ついに入手しました。

昨年11月に刊行の『色気も濃すぎちゃ野暮でげす』(晶文社、千八百九十円)。読んでみようかなと思ったのは、紀伊国屋ホール舞台で拝見した時の「お人柄」に尽きます。小唄扇派二代目家元、という重い肩書きをお持ちであるにも関わらず、扇よし和さんの雰囲気のなんと軽やかなこと。とてもキュート。あり余るほどの小唄への愛情をお持ちの方です。

かねてから、旧来の枠に収まることを良しとせず、第1回目当時では珍しかった個人リサイタル(三越劇場)を開いたり、テレビやラジオに出演されたり、アクティブに活動されています。それもこれも、多くの人に小唄を知ってもらうことを願いの一つとして行っていらっしゃいますが、こちらの本も、小唄普及のための啓蒙活動が一つのテーマとおみうけしました。とにかく小唄が好きで、多くのひとに小唄のよさを知って貰いというせつせつとした思いが良く伝わります。

以下は、目次から。

小唄とは/小唄の味/小唄の起源と歴史/三味線/唄と三味線のお稽古/礼節を守る/修行を積む/艶な小唄美人/明日の健康 今日の小唄/小唄ダイエット法/小唄のユニフォーム/お師匠さん/電撃トレード/二代目家元継承/小唄の先人/垣根を越えて/こんな小唄に誰がした/小唄の吐息 シャンソンの溜息/背中のお呪(まじな)い/芝居小唄/草紙庵(そうしあん)の小唄/まつりの魂 小唄に宿る/舞台芸術としての小唄/小唄がご縁で/新派の芝居小唄/小唄の曲作り/上を向いて歩こう/小唄と東明流/小唄振り/木遣り/小唄と噺(はなし)/小唄のために/小唄のこれから/

各章のタイトルからだけでも、なんとなく感じが掴めますでしょうか。初心者向きだと思います。小唄のエッセンスと言いますか、小唄の説明や歴史に始まり(よし和さんの卒論テーマは「小唄の歴史」だったそうですよ)、他の分野とのジョイント活動、粋や洒落等についてやさしく語られています。昭和のある時期、男性が小唄を「仕事がデキる紳士の嗜み」として習うことが大流行したそうですが、ここでは女性にとって目の引く「効能」が挙げられています。それは、小唄をしていると美しさ、健康が手に入り、ダイエットにもなるというもの。弾き唄うことで右脳と左脳がバランスよく刺激されること、正しい姿勢が身に付く事、腹式呼吸が身に付くこと、日常と異なる場が良い緊張感を生むこと等・・・言われてみれば確かにとうなずくことが多く、美の効用に裏付けもあるようです。何より、よし和さんのやわらかな美しさを見れば分かりますね。

解説がしっかり入った小唄11曲が収録されたCDが付属されているのも、初心者によい点かもしれません。これを聴けば、とりあえず小唄がどんなものかイメージが掴めます。それに歌詞も、現代人が読んで難なく意味がわかりますし、題材も男と女のことだったり、身近な題材ですから、共感する事しきり・・・。傘かしげ、などいまも伝えられる「江戸しぐさ(思いやり)」がありますが、小唄の歌詞には江戸しぐさが感じられるものも多いそうです。

最後に、よし和さんの意外な一面を。家元は大型バイクに乗ってスピードを出すのがお好きだったとか。たおやかな家元が大型バイク・・・と、実は一番驚きました。当方も中型は乗っていたことがありますが、女性で大型は体力的にもキツいですし、断言しますが、かなりお好きでないと乗れません。家元のバイク姿、格好良いでしょうね。

三越劇場で毎年行われる、弊財団主催の「小唄まつり」。今年は7月9日・10日に開催です。よし和さんはこちらに毎年出演なさっています。こうした関連より、この場を借りて宣伝させていただきます。

2012年小唄まつりご案内:
◆第52回 ビクター名流小唄まつり

以前に小唄まつりを取り上げたブログ:
◆「小唄まつり」無事終了致しました
◆「小唄まつり」準備中


(弘)