じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

トーハク特別展「和様の書」

上野の東京国立博物館(トーハク)で特別展「和様の書」を見てきました(7月13日〜9月8日開催)。→東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「和様の書」

和様というのは日本風のということですが、もともと書の文化は中国から入ってきたものなので、当初はそれを学んだ日本人も中国風(唐様)の書を書いていました。その後平安時代に日本独自の美意識によって書の姿も変わってきて現れたのが和様の書。その代表である「三跡(さんせき)」が、この展覧会にはそろって出ています。
むかし試験勉強で暗記したという方もいるでしょう。おぼえていますか?「三跡」は次の3人です。
小野道風 おののとうふう(894〜966)
藤原佐理 ふじわらのさり(944〜98)
藤原行成 ふじわらのこうぜい(972〜1027)
それぞれの作品の写真と説明が「1089(トーハク)ブログ」に出ていますのでご覧ください。→東京国立博物館 - 1089ブログ
そして、実物はやはりすばらしかったです! 千年以上も前の書があざやかに残っているのも驚きです。
最後の藤原行成が和様の書を確立したということですが、小野道風藤原佐理はそれぞれ個性があり、ふっくらした感じの道風と細めで勢いのある佐理と、どちらも見ていて飽きません。
トーハクのサイトでは特別展「和様の書」の「美文字選手権」というコーナーもあります。道風か佐理のどちらか、と迷ったあげく、佐理に投票しました。今のところ2位につけています。(→東京国立博物館 - 投票・アンケート 現在の投票結果)特別展には信長や秀吉、芭蕉など歴史上の有名人物の書も出ていて、こちらにもエントリーされています。
そのほか、寸松庵色紙、継色紙、升色紙の「三色紙」や「高野切(こうやぎれ)」など仮名の名品、厳島神社の平家納経など贅を尽くした美術品でもあるお経、究極の書のコレクションともいえる手鑑(てかがみ)など、よだれの出そうな名筆ばかりで、見応えがありました。
以前、ある美術館の学芸員の方に、書を鑑賞するコツを教えていただいたことがあります。それは意外にも、「けっして字を読まないこと」というものでした。
展覧会場で、くずし字を解読して一生懸命声に出して読んでいる人や、なかには展示説明の読み下しを読んで満足し、ろくに実物を見ない人までいますが、それは字を読んでいるのであって、書を見ていることにはならないとのこと。
紙面全体を眺めて、文字の配置(デザイン、構成)、墨の濃淡、余白の美しさ、筆の勢いなど、絵を鑑賞するように、見ることで感じるものがあります。アメリカの美術館では書のコーナーが人気だそうですが、日本の字が読めないので意味にとらわれることがない分、アートとして素直に鑑賞できるのかもしれませんね。
国宝や重要文化財が数多く展示されていますが、保護のため展示期間が限定されていて、展示替えがあります。→東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「和様の書」 作品リスト
後半も名品がたくさん出ます。トーハクで「字を読まない」書の鑑賞、皆さまもぜひお試しください。

(Y)