じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

岡本民家園<2>

昨年の九月にこちらのブログでもご紹介致しました、世田谷区岡本民家園に行って参りました。暖かな日で「本当に春だな・・・」と感じさせる陽気でした。二子玉川駅からバスで15分程度。この一帯には、岡本静嘉堂緑地、岡本公園などが隣り合わせにあり、緑にあふれています。入園は無料、おとなりが広い公園であることから、親子で訪れるのもおススメです。


全体図をパンフレットから拝借いたしました。敷地には藁葺の母屋、そして蔵、門が当時の姿のままに配置されています。そして、母屋の裏には井戸と、鶏小屋。蔵の横には畑があります。江戸時代後期の代表的な農村風景。母屋に入ると、土間がありそこには蓑・つづら・杵・うす・むしろ・草履・竈・砧などが置かれていて、囲炉裏で炭がくすぶる匂いが心地よく広がっていました。


土間を上がると、田の字になった畳の間と納戸があります。中央に神棚が配され、奥の間にご先祖様をお祭りしていたと思われるお仏壇も。昼間、外との遮断は紙障子。障子は開け放されていて、訪れた人々が気持ちよさそうに、外を見ながら縁側に腰を掛けていました。納戸の中はひんやり。こちらは箪笥などが置かれると共に、ご夫妻の寝所になっていたそうです。高い天井。黒光りしている梁。囲炉裏に残る、まだ赤々としている炭。すべてが心地よく感じながら、玄関からまた外に出ました。


そこで気づいたのは、戸口に飾られた柊と鰯。そして八咫烏のシンボル。柊と鰯は節分の時に目にされるでと思いますが魔除け。八咫烏は日本の神話に出てくるカラス。といっても神格化されていて太陽の化身と言われています。こちらも魔除けだったのではないでしょうか。


民家園を後にしてすっかりリラックスした気持ち。外に出て玉堤通りまで歩く途中、青い空に咲く梅の花にしばし見とれました。尚、この近くには野川、丸子川など川が多く、そののどかな様子に谷川俊太郎氏の「川」を思い出しました。私の大好きな詩です。

 川      谷川 俊太郎          
母さん
川はどうして笑っているの
太陽が川をくすぐるからよ

母さん
川はどうして歌っているの
ひばりが川の声をほめたから

母さん
川はどうして冷たいの
いつか雪に愛された思い出に

母さん
川はいくつになったの
いつまでも若い春とおないどし

母さん
川はどうして休まないの
それはね海の母さんが
川の帰りを待っているのよ

    

(弘)