じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「高橋翠秋・胡弓の栞 月詠抄(つくよみしょう)」

昨年暮れに発表された平成29年度(第72回)文化庁芸術祭賞で、当財団制作・発売の「高橋翠秋・胡弓の栞 月詠抄(つくよみしょう)」(2017年11月22日発売)が優秀賞を受賞しました。

この3枚組のCDは、胡弓演奏の第一人者、高橋翠秋さんの熟練の技芸によって、胡弓音楽の領域を古典の幅広いジャンルにわたって一望するという画期的なアルバムです。
胡弓の音色は、歌舞伎や文楽のなかで効果的に演奏されているのを耳にしたことのある方も多いと思います。もともと単独で演奏されることは稀で、このCDは全21曲が新録音ですが、独奏は1曲だけ、ほかは箏や三味線などの気鋭の演奏家との合奏です。
芸術祭賞優秀賞の受賞理由は次のとおりです。

本CDは、本来が助奏楽器である胡弓の多様な表現力と魅力を、三曲と歌舞伎音楽から作品を選んで紹介した力作である。伝統的な作品に留まらず、尺八との二重奏や胡弓のみの三重奏といった新しい合奏の試みにも挑戦している。
解説(英訳付き)は、最新の研究成果も反映し、学術的にも信頼のおける胡弓と胡弓音楽の紹介となっている。

「月のように輝く胡弓の魅力」と題したライナーノーツで、解説の野川美穂子さんは次のように記しています。

胡弓には、驚くほどに多彩で豊かな表現力があります。一筋の細い糸のように持続する音には、人の心に寄り添う優しさ、人の心の奥深くに迫ってくる哀しさ・・・。いっぽうで、明るく華やかな音、楽しい音、力強い音もあります。このCDでは、胡弓の豊かな表現力を感じていただけるよう、さまざまな作品を選んでいます。

高橋翠秋さんが主な活躍の場としている歌舞伎音楽の、名場面で流れる黒御簾(くろみす)や竹本(義太夫)の曲も収録されています。胡弓の多彩な音色をこのCDで味わうとともに、歌舞伎観劇のときにも、ぜひ胡弓の音色に耳を傾けていただければと思います。
曲目や高橋翠秋さんのプロフィールなど、詳しくはこちらをご覧ください。→ 「高橋翠秋・胡弓の栞 月詠抄」

(Y)