じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「二箇法用付 大般若 転読会」文化庁芸術祭(レコード部門)大賞受賞!


CD2枚組「真言宗 豊山聲明 二箇法用付(にかほうようつき)大般若(だいはんにゃ)転読会(てんどくえ)」
「大般若転読会」って何?と思われるかもしれませんが、「お経をパラパラするパフォーマンス」と言えば思い当たる方も多いかもしれません。そもそも「大般若転読会」は、『大般若波羅蜜多経』600巻を転読・講讃し、鎮護国家・除災招福・五穀成就・息災延命を祈願する法会です。
このCDはおそらく現在入手可能なもので、「大般若転読会」の全貌を明らかにした唯一の作品ではないかと思います。真言宗豊山派(しんごんしゅう・ぶざんは)の迦陵頻伽聲明研究会(かりょうびんが・しょうみょうけんきゅうかい)の皆さんの演唱。声明の真の在り方と芸術的価値を高めることに寄与した「声明四人の会」主要メンバー、孤嶋由昌先生の導師、新井弘順先生の唄師と監修・解説です。
真言宗豊山派総本山は奈良の初瀬にある長谷寺ですが、今回の収録は板橋にある安養院の本堂で行いました。収録は2018年3月8日、朝から冷たいみぞれの降る寒い日でした。雨音しか聞こえない静まり返った本堂の回廊に、引金の音に導かれて無言の職衆と導師が整列し、山伏姿の吹螺師(すいらし)が法螺貝を吹いて法会の開始を告げる・・・こんなオープニングでこのCDは始まります。
上堂
吹螺師
「大般若転読会」は、「最も古くて、最も新しい、そして最も美しい声明」と新井先生は語ります。この法会の中心となる『大般若波羅蜜多経』は、唐の玄奘三蔵が17年間・3万キロに及ぶインドへの旅から持ち帰り、自らが全600巻をサンスクリットから漢訳し、その後日本へと渡ってきた経典です。また法会の上堂の際に唱えられる<四智梵語(しちのぼんご)>は7世紀頃のインドで作られたもので、インド・中国・日本と三国伝来の声明がこの法会の中にはさまざまに組み込まれています。
一方、1966年国立劇場開場記念公演において真言声明の第一人者・故青木融光大僧正が行った「大般若転読会」は、《舞台芸術》として世界中の人々を魅了しました。そして今や「声明」は世界の《SHŌMYŌ》《音楽文化遺産》として位置づけられています。もはや「大般若転読会」はお寺のお堂から飛び出して、世界各国のホールや大聖堂でも行われるようになり、最も効果的でかつ最も洗練された華やかなパフォーマンスが工夫され、声明の持つ本来の響きの美しさと相まって、人々を魅了し続け進化し続けています。
散華
転読
このCDは、「大般若転読会」としては本来行われないパフォーマンス性の高い「上堂」と「退堂」の様式を併せ収録すると共に、「二箇法用」「大般若転読会」においては、仏教儀式としての有るべき資料となるべく制作したものです。現代の声明家の最高峰である孤嶋・新井両先生、迦陵頻伽聲明研究会の皆様の、「次世代の日本の伝統文化継承のために、記録を残し広く発信したい」という切実な願いを共有し、渾身の力を込めて制作いたしました。こうしたひたむきな努力が、芸術祭大賞受賞にあたり評価されたことはこの上もない喜びです。

文化庁芸術祭 レコード部門 大賞 受賞理由】
大般若転読会は1966年国立劇場開場記念公演にも取り上げられ,経典を空中に翻す華麗な所作が印象深い。この法会を,真言宗豊山派長谷寺に伝わる次第に基づいて声明公演用に再構成し,圧倒的な音声の力が醸成する神髄を耳から体感できる形に仕上げた。迦陵頻伽聲明研究会が豊山声明の発信と次世代への継承をめざした渾身の新録音。


さて、このCDと同内容のDVD(商品番号:VZBG-61)が2月20日発売されます。大音声で経典を空中に翻し、瞬時に転読する声明の響きは、読経そのものの威力と重なった大エネルギーによって、悪魔を降伏させると伝えられます。こうした劇的かつスペクタクルなパフォーマンス、堂内の様子、凛とした様々な所作等は映像でお楽しみいただきたいと思います。乞うご期待!!

(やちゃ坊)