じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

半濁音、ムックリ――アイヌ文化フェス

先週の土曜午後におじゃましたアイヌ文化フェスティバル2010@東京国際フォーラムの話を。

ステージと展示があり、ステージは基調講演、口承文芸口演、音楽公演(トンコリムックリ)、舞踊公演という構成。展示にもステージの終演後、大勢の方が集まっていました。
パネル、工芸品、伝統衣装などの展示があり、衣装を見ていた若い女性たちから「おしゃれだねー」という声も聞こえ、そちらも大盛況。

私が印象に残ったのは、ステージでの口承文芸口演。文書に書き残す習慣がないアイヌの人たちが、代々口承で伝えてきた文芸――口承文芸口演であらためて面白いと感じたのは、半濁音。
いわゆる「ぱぴぷぺぽ」の音ですよね。

今回口演された「トイトイ ウ アサハ イエレス(toytoy us kam a=saha i=eresu)」(土のついた肉で私は育てられた)には、濁音がいっさいなく、ところどころに半濁音が入っている。

たとえば「ト゜」。日本語の表記であまり見かけないけれど、だいたいのところで「トゥ」の音に聞こえる。アルファベットだと「t」。

日本語は母音「aiueo」をほとんどの場面で使いますが、アイヌ語は必ずしもそうではなく、その響きはアイヌ独自のもの。

その口演はなんだか柔らかくて優しい響きでした。


次に「ムックリ」のお話を。

世界中に「口琴(こうきん)」という種類の楽器があって、各地で使われる素材はいろいろあるようですが、アイヌの場合は竹で「ムックリ」と呼ばれています。

会場でムックリの実演指導もありましたが、シンプルなわりに、みなさん意外と難しかったかもしれません。
そこかしこで「みゃおん、みゃおん」と怪しげな音が響き、普段のコンサートにはない面白さ。思わず笑いがこぼれます。

しかし、その場では音が出ず、悔しい思い(苦笑)をした自分は、家に帰ってからじっくり練習――「みゃおん」。
お、音が出ました。
口の空間を使って響かせる仕組みなのか。口の形によって音のヴァリエーションもつけられるので、けっこう面白い。

名作曲家、伊福部昭さんが北海道での子供時代、ムックリに惹かれていたらしいという話を思い出しました。
自分の場合、子供のころに聴いたのは……というとTVアニメ「ど根性ガエル」の主題歌だったかな。正確には「ムックリ」じゃない口琴だと思うけれど、楽器の種類は一緒だ、きっと。

「みゃおん、みゃおん……」とその夜怪しい音を鳴らし、フェスの余韻に浸っていました(口笛同様、夜はあまりよろしくない可能性も?)。

(じゃぽ音っと編集部T)