じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

マジカルな、オペラの夜

10/8金曜日、新芸術監督、尾高忠明氏が就任した新国立劇場へ、シーズン開幕公演を見に行ってきました(初日は10/2)。三階席です。演目はリヒャルト・シュトラウスの「アラベッラ」。

1幕ではオケの音バランスもよくなく(管楽器が必要以上に大きい)、歌手の声も聞こえづらかったのですが、2幕の静かな場面あたりからは持ち直して徐々にサウンドが良くなり、3幕では管はシュトラウスらしく朗々と鳴るなかで、弦楽器の艶が出て張りのある音の集合体となり、オーケストラ全体が混じり合い、歌手陣を支え始めました。不思議なことに伴奏の音量が上がっても歌手の声は通ってくるようにもなりました。

3幕は特にストーリーの流れというか会話のつながりが不自然なところがもともとリブレット上あるのですが、スマートな演出もあいまって、オペラ最高の瞬間であろう聴覚と視覚を動員した総合的な表現が観客を包んだように思えます。周囲では泣いている人も何人かいました。

2幕の静かな場面、結婚を前にして、アラベッラが自分を好いている三人の男たちに順々に別れを告げる場面、ここでは青春時代の終わりというか、プッチーニラ・ボエーム」にも通じる切なさとほろ苦さが会場内に満ち満ちて、秀逸でした。

指揮:ウルフ・シルマー、演出・美術・照明:フィリップ・アルロー、衣装:森英恵

(J)