じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

クラムボンの会主宰 林洋子さん

11月3日は「晴れの特異日」として知られていますね。今年も朝から良い天気でした。

クラムボンの会主宰林洋子さんが東京で産声を上げた80年前のこの日も、きっと秋晴れだったのでしょう。林さん自ら「晴れおんな」とおっしゃる通り、少しの雨なら吹き飛ばしてしまうパワーを、しばしば目の当たりにしています。(おかげで公演日は毎回傘いらず。助かります。)

この日、東京・本郷にある求道会館(東京都指定有形文化財)にて、<クラムボンの会30周年記念大公演その6 林洋子薩摩琵琶弾き語り「なめとこ山の熊」「文語詩朗唱」>が上演されました。(その様子は11/4付けブログで紹介されています)

30年前の1980年、林さんは50歳の時に「クラムボンの会」を作り、宮沢賢治作品のひとり語り出前公演を開始しました。生の音楽と共に語り演じる独特の公演は、日本全国、更に海外でも熱い喝采を受けています。出前注文のあるところ全国どこへでも、語り手一人、又は伴奏者と二人で、楽器と簡単な照明器具を持って出掛けて行きます。

林さんは、「宮沢賢治の物語からは、不思議な音が聞こえて来る」と言います。物語の音に耳を澄ませ、楽器を選び、その音色と共に語り演じています。

今回上演した「なめとこ山の熊」の初演は1995年。聞こえてくる音は薩摩琵琶でなければ表現できないと、初演の2年前から鶴田派・田中之雄氏に師事。さまざまな奏法を習得し、物語に新しい音を組み込みました。肉声と生の音楽による公演です。「朗読」ではありません。原作の一言一句を体の中に埋め込み、林さんの命を込めた宮沢賢治の言葉を、観客の目を見て直接語りかける「ひとり語り」なのです。

公演の後、求道会館近くの「フォーレスト本郷」にて<クラムボンの会30周年&林洋子さん満80歳おめでとう!パーティー>が開かれました。全国各地からご関係者が多数お越しになり、アットホームな雰囲気の中、笑いあり、涙ありのあっという間の2時間半でした。

この日は林さん80歳のお誕生日。素敵なケーキも贈られました。

8本のローソクを吹き消した後、林さんと一緒に親友でもあり女優として大活躍されている野村昭子さんによるケーキカットという、楽しい演出もありました。

林さんと野村昭子さんは俳優座養成所一期の同期生です。今でもお互い刺激しあいながら仲良くされているようです。
人生の先輩お二人の姿を近くで拝見し、常に前進し続ける力の偉大さ、継続することの意味等、いろんな思いが頭をめぐりました。

80歳とは思えない若々しい林さん。毎朝の運動、健康的な食事、そしてこの「クラムボンの会」を続けていくことが若さの秘訣なのだそうです。

クラムボンの会30周年記念大公演>も、残すところ11月23日(祝)の1公演のみとなりました。弦楽四重奏と朗読による「ギタンジャリ」(詩:タゴール)、同じく求道会館で行われます。次回は宮沢賢治の物語ではありませんが、海外でも上演し称賛された公演の再演となります。ぜひお越し下さい。

(K)