じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

テノール歌手 木下保先生(2) 

2月28日に、テノール歌手 木下 保(きのした たもつ1903〜1982)先生のお話を致しましたが、本日はその続きをご紹介します。

前回は、ヴァイオリニスト志望から声楽家へ転向した木下先生が、留学を決意したところで終わりました。急に転向を決めたので、もう一度はじめから勉強をやり直す決意で、昭和7年にベルリンに渡ったそうです。
ベルリン滞在は2年3ヶ月、当時は円高で、1ヶ月200円もあれば本なども相当買えたそうです。ただ、音楽の留学生は少なかったようです。ベルリンで勉強後は、ナポリに渡って8ヶ月の間、個人教授について毎日勉強されたとのことです。
ドイツとイタリアでの勉強法ですが、ドイツでは一人で勉強したものを先生の前で歌い、悪いところを直してもらう、イタリアでは自分ではやらず先生の前だけで歌い、そのかわりレッスンは毎日、その都度先生が教えてくれるというものだったそうで、教え方の違いが面白いと感じたそうです。
戦後にゲルハルト・ヒュッシュ(ドイツ/バリトン)や、フェルッチョ・タリアヴィーニ(イタリア/テノール)が来日し、本場の歌を聞く機会があった時、勉強した根本的な発声法は間違っていないと思われたとのこと。ちなみにタリアヴィーニの美声は、弊財団より出ております、ノイズレスSPアーカイヴズシリーズ「伝説の歌声 イタリア・アリア集」でお聞きいただくことができます!

留学先から持ち帰った珍しい楽譜、資料は、戦争中はコンクリート防空壕にしまって保存したそうですが、それら、学び持ち帰ってきた曲を紹介するために、木下先生はリサイタルを開催します。次回は、人々を魅了した連続リサイタル「歌曲の夕(ゆうべ)」のお話をします。

昭和10年にご結婚された照子夫人と。照子夫人は先日、白寿を迎えられたそうです!

参考文献:東京新聞「木下保藝談第2回」昭和30年11月11日

(制作担当:うなぎ)