じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

尺八工房訪問記

先日、東京の下町・墨田区にあります、尺八工房まつもと様を訪ねました。ホームページ→尺八工房まつもと 松本浩和
主宰の松本浩和さんは大阪の堺ご出身、京都で過ごされていた大学時代、尺八の製作と演奏を同時期に始められたそうです。現在は工房を運営しつつ、三味線奏者のたまこさんこと奥様の杵屋佐之萌さんと玉松会というグループで保育園や福祉施設を演奏訪問されています。
玉松会(和楽器演奏グループ) (@tmmtkai) | Twitter
杵屋佐之萌さんのブログ→てくてくすくすく、ご出演の唄浄瑠璃狂言「藤戸」シアターΧ(カイ)|藤戸 唄浄瑠璃狂言|東京両国の演劇芸術を中心とした劇場

尺八製作に使用されている道具を見せていただきました。最初は数々のヤスリ。右端のものには「あご」の表示が。「あご当り」と言われる唄口の反対側の、楽器と顔が接する部分を削るときに使うヤスリです。ヤスリは場所場所によって使い分け、また同じヤスリでも、新しくてよく切れる物、つかって切れにくくなって来た物、それらも適材適所に分けていきます。ノコギリも同様とのこと。

ヤスリ三本と、のこぎり。

飾りや修理につかう籐。

完成した尺八たち。

松本さんの悩みというと、製作道具を作る職人さんがどんどんいなくなっていること、と伺いました。尺八奏者がいて、尺八製作者がいて、その道具を作る職人がいて・・・その人数を積んだピラミッドを仮に図に書いてみると、上が大きく下へ行くほど小さな逆ピラミッドになってしまうそうです。

道具職人さんがいなくなるとすると・・いつの日か、尺八という楽器が吹けなくなってしまう。尺八を演奏したいというかたは増えているようですが…。尺八の修理をされる尺八製作者のかたも、道具が無ければ作業ができないわけですから、既存の尺八もどんどん減っていくことになります。安い中国産などに押されるというコストの問題が関係しているようですが、これはいろいろな産業に当てはまる構造なのかもしれません。趣味趣向が細分化している今の時代、人と必要な情報の流れさえうまくつなぐことができれば、消え去るべきでない大切なものが守られていく可能性は残されます。最後に松本さんが強調されたのは「こんな時代だからこそ、個人同士のつながりが大事になる。インターネット、ソーシャルメディアはそのための役に立つでしょう」でした。

(J)

<110318追記>文中の杵屋佐之萌さんご出演の公演『藤戸』唄浄瑠璃狂言(2011年3月16日&17日)は、地震の影響により、2012年3月10日&11日に延期されました。シアターΧ(カイ)|藤戸 唄浄瑠璃狂言|東京両国の演劇芸術を中心とした劇場