じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

芸術選奨文部科学大臣賞と新人賞が決定

平成22年度(第61回)芸術選奨文部科学大臣賞および同新人賞が発表されています。これは昭和25年(1950年)から毎年度、「芸術各分野において、優れた業績をあげた方、または新生面を開いた方に対して」文化庁から贈られるものです。

今年度は、邦楽関連では以下の方々が受賞されました(敬称略)。

文部科学大臣賞 演劇部門】
野澤錦糸(のざわ きんし)<文楽三味線方>
[授賞対象]公演「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」他の成果
[贈賞理由]平成7年に始まる竹本住大夫氏とのコンビはいよいよ円熟味を増し、その質の高さと安定感は他の追随を許さない。特に4月の通し狂言「妹背山婦女庭訓」では「妹山背山の段」を端正かつ力強く弾いて、時代物らしい輪郭の大きさをあらわした。また6月の素浄瑠璃の会「桂川連理柵」の「帯屋の段」では、市井の男女の哀歓を余韻嫋々たる響きで細やかに表現した。時代世話を問わない、硬軟自在の撥さばきは、今後の文楽三味線を担う証しである。

文部科学大臣賞 音楽部門】
砂崎知子(すなざき ともこ)<箏曲演奏家
[授賞対象]「砂崎知子箏リサイタル協奏曲の夕べ」の成果
[贈賞理由]砂崎知子氏は、伝統的な技法を遵守しつつ、現代的な感覚を盛り込んだ演奏で、古典曲から現代曲にいたる幅広い活動を続けてきた。「協奏曲の夕べ」と題する昨年のリサイタルでは、独奏の箏と邦楽器を中心とする楽器群との合奏に焦点をあてた意欲的なプログラムを企画し、宮城道雄、長澤勝俊、船川利夫、唯是震一の四作品を取り上げて、そのいずれにおいても箏の独奏を担当、作品の時代性と特徴を生かした芸術性の高い演奏を披露した。

文部科学大臣新人賞 音楽部門】
藤井昭子(ふじい あきこ)<地歌箏曲演奏家
[授賞対象]「第50回藤井昭子地歌ライブ」他の成果
[贈賞理由]平成13年6月以来ほぼ2ヶ月に一度のペースで開催してきた「藤井昭子地歌ライブ」は、さまざまな演奏家を迎え、古典音楽を継承し新しい可能性を探り、質の高い演奏を展開しながら、今年度で50回の節目を迎えた。他に年に一度の「藤井昭子演奏会」(通算11回)や、「JIUTA 地歌藤井昭子」(英語による解説、通算3回)、海外演奏旅行、放送などで、国内外に地歌の真髄の発信につとめており、今後の発展が大いに期待される。

そして邦楽関連ではありませんが、昨年12月の「じゃぽ音っとブログ」で取り上げた「NEO都々逸」の作者である作曲家・三輪眞弘さんも芸術振興部門で文部科学大臣賞を受賞されています。

その他、全部門の受賞者の詳しい情報は、文化庁のホームページ内のPDFファイルでご覧ください →


なお、文部科学大臣新人賞を受賞された藤井昭子さんから昨夜連絡があり、今回受賞対象ともなった「藤井昭子地歌ライブ」の、次回2011年4月11日(月)に予定されていた会(第53回 藤井昭子 地歌ライブ 八橋検校〜近世箏曲の始祖八橋検校 )を延期されるとのことです。藤井昭子さんから届いたメッセージを以下ご紹介させていただきます。

第53回「藤井昭子地歌ライブ」開催延期のお知らせ
3月11日の大震災は、本当にたくさんの方々に深い悲しみと大きな苦しみをもたらし、報道を通じて知らされる災害と惨状は日を追って拡大する一方です。
このような未曾有の悲惨な状況を目の前に、演奏活動は控えるべきと決断し、4月11日開催を予定致しておりました第53回「藤井昭子地歌ライブ」を無期延期することと致しました。
2001年6月より二ヶ月に一度の定期開催を続けて参りました地歌ライブでございますが、何卒ご理解賜りますよう謹んでお願い申し上げます。
尚、今後に付きましては改めましてご案内させて頂きたく存じます。
被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、皆様にはくれぐれもお気を付け下さいますようお願い申し上げます。

草々

2011年3月

藤井昭子

このたび被災された方々お一人ずつの悲しみに思いを致し、その苦しみと共にありたいと思います。今も極限の厳しさのなかにあって、生きるための困難な勇気を振り絞っての避難生活を強いられている大勢の方々の姿に強く深く胸を打たれています。種々の災害支援物資が無事に確保され、必要とされる場所に速やかに届くことを願ってやみません。

(堀内)