じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

テノール歌手 木下保先生(3) 

3月4日に、「テノール歌手 木下保先生(2)」をご紹介いたしましたが、本日はその続きです。

木下 保(きのしたたもつ 明治36〜昭和57年)先生は、ヴァイオリニスト志望でしたが、声楽家へ転向したのを機に、昭和7年、ベルリン、ナポリに留学します。帰国後は、海外から持ち帰った貴重な資料を紹介するために、リサイタルをはじめます。
昭和10年10月に、第1回「近代ドイツ歌曲の夕(ゆうべ)」(伴奏:永井進)が開催され、その後昭和29年までに、14回のリサイタルが行なわれました。第2回〜9回までは、ベートーヴェン、シューベト、シューマンブラームス、ヴォルフの独唱会、第10回〜12回は信時潔山田耕筰、平井保喜(康三郎)の独唱会、第13回〜14回は、現代ドイツリート、R.トゥルンクの独唱会でした。
戦争中は、日本人作曲家の作品の会を行いましたが、中でも印象に残っているのは、平井保喜(康三郎)先生の時だそうです。終戦の年、進駐軍が厚木から東京へはじめて来た日で、日比谷公会堂の窓から公園広場を見ると、大砲や戦車がずらりとならんでいたそうです。お客様は、千人以上、二千人近く入ったということですが、そういう時期でしたので、見渡す限り皆、男性だったそうで、女性は奥様だけ!?・・だったそうです。
さて、次回は多くの作曲家、声楽家が開眼したという、「信時潔歌曲の夕」のお話をいたします。

プログラム:資料提供 増山歌子様
参考文献:東京新聞「木下保藝談第2回」昭和30年11月11日

(制作担当:うなぎ)