じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

民謡スタジオ録音

6月22日(水)発売予定の民謡シングル2タイトル用として、今週月曜日にキング関口台スタジオにて4曲録音しました。
静岡県の「伊豆中木節」と和歌山県の「日高川甚句」を富田房枝さんに、岩手県の「正調外山節」と埼玉県の「狭山茶作り唄」を武花千草さんに唄っていただきました。

(左:富田房枝さん、右:武花千草さん)

伴奏してくださったのは、三味線:藤本流二代目家元藤本琇丈・藤本秀統、尺八(笛):米谷和修、太鼓:美鵬流家元美鵬駒三朗・美鵬那る駒、囃子:新津幸子・新津美恵子という豪華な顔ぶれでした。先生方、素敵な演奏をありがとうございました。
これらの曲は6月の末に予定されている、<ビクター民踊・舞踊連盟> の全国指導者合同研修会の講習曲として発売するもので、今後全国で民踊愛好家に踊られるものとなります。多くの方々に楽しく踊っていただけることを願っています。

せっかくですので、それぞれの民謡の簡単な解説を記します。
伊豆中木節(いずなかぎぶし)(静岡県民謡)
南伊豆中木のお座敷唄で、囃子言葉の『ヨイトコリャ サッサ』という調子の良い響きがこの唄の魅力です。中木は石廊崎に近い西海岸の漁港で、帆船時代には海が荒れた時の避難港としてかなり頻繁に諸国の船が出入りし、遊郭も発達していたようです。遊興客相手の代表的な酒盛唄がこれで、中木の色街を中心にかなり広い範囲で唄われました。

日高川甚句(和歌山県民謡)
日高川和歌山県日高郡にあり、安珍清姫の伝説で有名です。この物語は歌舞伎でも有名になった悲恋物語で、紀州女の情の深さを詠っている俗謡です。古くから伝承されて来た唄のようですが、これとよく似たものに山形県の「酒田甚句」や、熊本県の「おてもやん」があります。「蛇になっても この川を」以下の囃し言葉は、古くから酒席で唄われている「浅い川」です。

正調外山節(せいちょうそとやまぶし)(岩手県民謡)
明治中期に岩手県の外山に作られた御料牧場の開拓作業員によって唄われた「草刈唄」が起源。牧場の閉鎖で一時忘れ去られたが、昭和初期に二種類の元唄が発掘され、三味線の手を加えて祝い唄のお座敷唄化した「外山節」がレコードで普及したため、地元の民謡界で唄われている「正調外山節」はあまり知られていません。両曲は歌詞は同じですが囃子が違い、「正調」の方は弾んでいて旋律も少し違っています。

狭山茶作り唄(埼玉県民謡)
埼玉県中央部の丘陵地帯に広がる茶畑は、700年の伝統を持つ日本有数のお茶の産地で、そのお茶は『狭山茶』と呼ばれています。静岡や宇治の香りに対して、味で勝負をしています。この産地独特の〈狭山火入れ〉という技術がこらされ、その時のちらし揉みの時に歌うもの。

(K)