じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「春の小川」をめぐって

最近刊行された『「春の小川」はなぜ消えたか―渋谷川にみる都市河川の歴史』(田原光泰著、之潮発行)を読んでいます。
「春の小川」といえばすぐにメロディと詞が浮かぶ素晴らしい歌。詞を手掛けた有名な国文学者の高野辰之さん(「春が来た」「もみじ」などの唱歌のほか、じゃぽ音っとで検索するとこれだけ作品がヒット→)がお住まいだったところが渋谷川支流(河骨〈こうほね〉川)にほど近かったことから、現在その歌碑が残されている……それを自分は最近までつゆ知らず、なんとなくこの歌から子どもの時分に遊びまわったような、のどかな田園風景を思い浮かべていたのでした。
作詞されたのは100年ほど前。いまや河骨川(参宮橋駅周辺)や渋谷川が流れる新宿〜恵比寿周辺は住宅やマンション、ビル群になっていて、その歌の面影を見つけることは到底難しくなっています。ですが、筆者の方が地図や写真を豊富に揃え、徹底的に調査したこの本を読み進めていくと、のどかな風景と現在の風景をつなぐミッシング・リンクというか、歌が作られた頃ののどかな風景から現在の都市の姿へと変貌していく様子が目に見えるような気がします。

本のお話とは別になりますが、じつは“春の小川”が本当に河骨川だったのかというはっきりとした証拠は残されていないそうで、しかもこの歌が発表された当時の歌詞は文語体。自分が小学校で唄ったのは戦後、口語に変更されたものですから、歌にも歴史が刻まれてきているのですね。

では最後に、箏のインストゥルメンタルでの「春の小川」を収録した「Healing Koto KOTOで聴く 日本の歌百選Ⅷ」をご紹介します。

(じゃぽ音っと編集部T)