じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

CD「箏・三弦 古典/現代名曲集(22)」の「荒城の月変奏曲」

本日は、5月25日に発売した「箏・三弦 古典/現代名曲集(22)」のご紹介、第3回目です。収録曲を1曲づつご紹介していましたが、本日は「荒城の月変奏曲」です。

「荒城の月」は、皆様ご存知、瀧廉太郎作曲の不朽の名作です。瀧廉太郎は、1879年(明治12)に生まれ、1903年明治36年)に病気のため23歳の若さで亡くなりましたが、代表作「荒城の月」「箱根八里」「花」「お正月」「雪やこんこ」と、いまでも愛唱されている曲が多いですね。本曲は、その「荒城の月」を正派邦楽会の志甫雅楽江(1910〜2003)が箏と十七弦の演奏用にアレンジしたもので、原曲の気品を生かした作風となっています。
話は少し脱線しますが、この曲の作詞者は、土井晩翠(1871〜1952)です。「土井」の読みが「つちい」か「どい」かについては、いろいろな記述があるようですが、本来は「つちい」で、後に「どい」と改称したのではということです。男性的な漢詩調詩風で、第一詩集『天地有情』に対する評価は島崎藤村と併称されたとのことですが、箏曲で宮城道雄作曲「春の夜」も、土井晩翠の詩によるものです。先日の藤井昭子さんのライブ(6月6日でブログご紹介)で演奏されたばかりですが、やわらかな、しっとりした内容です。歌詞を一部ご紹介します。
あるじは誰そや 白梅のかほりにむせぶ春の夜は
朧の月をたよりにて 忍び聴きけむ つまごとか(中略)
箏はむなしく音を絶えて 今はた忍ぶ彼ひとり
ああその夜半の梅が香を ああその夜半の月影を
「春の夜」は、「日本音楽の巨匠 生田流箏曲 ── 宮城道雄」、他に収録されています。この曲は、尺八のききどころも多く、こちらも名曲です。

 ところで「荒城の月」に戻りますが、唱歌を紹介する『日本の唱歌』(金田一春彦安西愛子編)という著書があります。この本では、唱歌を一曲づつ、歌詞・楽譜で紹介し、エピソードなども添えられていますが、ちょっぴり裏話的な話も書かれているのが、面白いです。

「荒城の月」のところを読んでみますと、
【日本を代表したテナー藤原義江がこの歌を愛し、広く海外でこの歌を歌って、この曲を有名にした。当時ビクターでは外人の吹きこみは赤盤と称して、高い値をつけて発売していたが、かれが吹き込んだこの曲は、日本人の最初の赤盤レコードととなり評判をとった。かれはこの曲の最後の節を変え、「ファレラーファファーミ」とミでとめる歌い方をしていた。】(『日本の唱歌〔上〕』講談社文庫より)
とあります。この「ミ」でとめる歌い方がちょっと想像しずらい方は、「ミ」で終わる「荒城の月」をこちらのCDで聞くことができます。

ところでこの本、文字が細かいです。去年は読めたのに、今年はちょっと厳しい・・・!?CD解説書は大きな文字で作成しよう、、と密かに思ったうなぎでした。そして、また1曲でご紹介が終わってしまいました。

(制作担当:うなぎ)