じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

小さな哲学者たち

昨日に続いて映画のことです。先月でしたが、映画『小さな哲学者たち』を観ました。

この映画はフランス、パリ郊外の幼稚園における3歳の園児達が5歳の卒園を迎えるまでの2年間のドキュメント。この幼稚園の中では月に数回哲学の時間が設けられ、先生が「愛ってなに?」「自由ってどういうこと?」「大人はなんでもできるの?」…とテーマを投げかけて園児達から意見を引き出します。園児達は学問や情報によって『知識』を得る前の年齢ですから、小さいなりに自分の体験と観察力によって自分で考察した意見を交わし合っています。

自分の経験でいうと、この『知識』というものは、時に判断力を鈍らせると感じることがあります。年をとればとるほど知識が頭に摺り込まれてしまって、ついつい模範解答を頭の中で探して、無難な意見に収まってしまうような。。。これは自分が感じて考えた意見なのだろうか。。。どこまでが知識で得た意見なのだろうか。。。と。

日本のニュース番組を観ていて、行楽地やイベントなどでマイクを向けらた子供達の「楽しかったです」「面白かったです」と、想定内の応えを観ると、どの子供の顔ものっぺらぼうに見えますが(あまりに過激な反応であれば番組側で編集されていることと思いますが)、この映画に出ている園児達が他の子の意見に耳を傾けている時や自分の意見を話す前にじっと考えている表情には、吸い込まれます。

園児達は正直であるがゆえに残酷なこともあります。肌の色のことで、黒人の男児が、「僕は白人に生まれたかったよ」と言い、アジア系の女児が、「私は結婚する相手は白人のほうがいいわ」と言います。黒、白、黄色のそれぞれの肌の園児達が一瞬静かに黙って考え込みます。。。通常であればタブーとされることに迫りますが、カメラはそのまま園児達の意見を映し出します。
そして、考え込んでいた黒人の女児が静かに言いました。
「私は、私のパパもママもウチの犬も大好きよ」と!

え?『ウチの犬』??

想定外の意見にハッとしました。
彼女は両親が黒人であるがゆえに自分が黒人であっても両親を恨むことはなく黒人であることを受け入れる、と言いたいのでしょう。しかし、そこに『ウチの犬』も入っているので、もう黒か白かなんて関係なくなりました。。。このセンス! 無邪気さの勝利。人種を超えて、人間か動物かペットであるかも超えて生きるもの全てに対するグローバルな愛を感じました。
オ・グランジ・アモール、、、大きな愛、という邦題だったと思いますが、テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツが吹いた名曲を思い出しました。アルバム「スウィート・レイン」収録です。ピアニストはチック・コリア。1967年録音。


http://tetsugaku-movie.com/index.html
スタン・ゲッツ/スウィート・レイン

(J)