じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

肥後の琵琶弾き 山鹿良之 その5

「じっちゃん」こと、山鹿良之師のCD、「肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界〜語りと神事〜」の5回目です。

本CD収録曲。
「ワタマシ」(熊本市立熊本博物館所蔵/1963年録音)、「道成寺」(兵藤裕己氏所蔵/1989年録音)、「菊池くずれ」(RKK熊本放送 1974年録音)、「あぜかけ姫」(野村眞智子氏所蔵/1970年録音)、「インストルメンタル」(RKK熊本放送/1974年録音)。

肥後琵琶は、古浄瑠璃の形式を伝える「小栗判官」や「俊徳丸」、戦記物の「菊池くずれ」や「柳川騒動」、明治・大正時代の新派物、「チャリ」と呼ばれる滑稽物、荒神祓いなどの祓い、「ワタマシ」と呼ばれる新築の神事など、その内容は幅広くあるそうです。山鹿師は、とにかくそのレパートリーが広かったということで、頭の中には200段以上の外題が詰まっていたこということです・・・。

収録曲の中の1曲「菊池くずれ」は、いわいる戦記物で、天正12年(1585)の肥前国龍造寺と薩摩国島津の合戦を背景とした物語です。島原軍記とも言われています。菊池の城主、赤星家の兄弟を中心に展開される物語で、山鹿さんは10段に及ぶ長編で語っていたそうです。本CDでは、一段〜三段と五段が抜粋で収録されています。赤星兄弟が再会する場面など、山鹿師の語りに力が入っています。
この録音は、RKK熊本放送で録音されたものですが、その時、一緒に即興で演奏されたものが、DISC-3に収録されているインストルメンタルです。これは短いのですが、とても印象的です。このとき山鹿師73歳です。お若い時の演奏は、さぞ力強かったであろうと想像できます。

もう一曲、収録曲をご紹介します。「あぜかけ姫」は、説経物とよばれるもので、前出の「小栗判官」「俊徳丸」、他に「石堂丸」などがあるそうです。「あぜかけ姫」は、関西、河内のお話ですが、九州以外ではあまり知られていなかったそうです。優れたアゼ織の技術をもつサヨテル姫と、そしてその義母を中心に展開するお話です。内容は、山鹿さんの語りをお聞きいただけたらと思います。「あぜかけ姫」の音源をお持ちだった、野村眞智子さんも熊本のご出身で、肥後琵琶の採録、語りの翻訳をなさっていた方です。
CD発売以来、じっちゃんパワーはいろいろなところへ!2009年8月には映画の上映もありました。

「肥後琵琶弾き 山鹿良之夜咄―人は最後の琵琶法師というけれど」(三一書房)という、木村理郎さんの著書もあります!
雑誌G-ModernさんVol.29でも、特集:日本の周縁音楽の中でご紹介いただきました。(2010年11月発売)
弊財団HPのニュースより『肥後の琵琶弾き 山鹿良之の世界〜語りと神事〜』芸術祭優秀賞受賞によせる、関係者のことばも併せてご覧ください。

(制作担当:うなぎ)