じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

文楽「寿式三番叟」と「三番三」

国立劇場(東京)の開場45周年記念「人形浄瑠璃文楽九月公演」が9月3日(土)から19日(月)まで行われています。劇場の壁面も45周年記念の大きな画像で彩られています。

第一部を観てきました。演目は「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)御殿の段」「近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)堀川猿廻しの段」。
今回のいちばんの目的は、めったに出ない文楽の「寿式三番叟」。これは祝賀に欠かせない祝儀曲で、昭和41年、国立劇場開場記念の文楽公演でも上演されたそうです。今回は45周年を寿ぐ演目でもありますが、3月11日の東日本大震災を受けて天下泰平・国土安穏の祈りを込めて演じるということ。
[:W230]演目の角書(つのがき)にも特別に「天下泰平/国土安穏」と記されています。能楽の「翁」を人形浄瑠璃に取り入れた作品ということですが、ちょうど4月に能楽堂で体験していたこともあって(→新緑の国立能楽堂で - じゃぽブログ)、興味深く拝見しました。
舞台は能舞台のような松が背景に描かれ、太夫竹本住大夫さんをはじめ6名、三味線も6名。床をはみだして舞台のほうまでずらりと並んでいます。重々しい住大夫さんの語りで始まり、ふだんはあまり意識しない御簾内(みすうち)のお囃子も聞こえてきて、やはり特別な雰囲気です。やがて三味線のツレ弾きが始まると、その迫力と調子のよさに引き込まれました。気迫のこもった太棹は、全員の息がぴったりあって心地よい響きです。
翁の人形は吉田簑助さん。お人形が面をつけるという珍しい場面もありました。翁が退場した後、2人の三番叟が鈴を振り、種を蒔く仕草をしながら四方を清め、賑やかに踊るところは、若い人形遣い2人が大熱演。途中で片方が疲れて肩で息をして休もうとするのをもう一方が励ましたり、そちらも相手の目を盗んで休んだりと(もちろん人形が、です)、能楽にはない笑いをさそうシーンもありました。
能楽では三番叟は一人で、狂言方が演じます。今年の5月31日に開催された東日本大震災チャリティ公演、日本伝統文化振興財団賞歴代受賞者による「古典芸能の夕べ」でも、幕開きに「三番三(さんばそう)」が今年の受賞者、山本泰太郎さんによって演じられました。翁の登場する場面を省いた狂言方だけによる「三番叟」(山本東次郎家では「三番三」と表記)はお祝い事などでよく上演されますが、この公演では東日本大震災の被災地を思い、鎮魂と平穏、復興と豊穣の祈りを込めて演じられました。
チャリティ公演のレポートはこちらです。公演情報:第十五回日本伝統文化振興財団賞贈呈式/日本伝統文化振興財団賞歴代受賞者による 古典芸能の夕べ 東日本大震災チャリティ公演【日本伝統文化振興財団 じゃぽ音っと】
また、公演の様子のダイジェスト版を、YouTubeでアップしましたのでぜひご覧ください。「三番三」はいちばん最初の演目です。


出演者について詳細はこちらをご覧ください。チャリティ公演曲目と出演者 #charity531 - じゃぽブログ

(Y)