じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

かけがえのない地球


「持続可能な開発(発展)」という言葉の最初の国際的定義は、1983年に設立された国連の環境と開発に関する委員会によって提示されました。「未来の世代が自分たちの要求を満たす可能性を脅かすことなく、現在の要求を満たせるような開発」であり、それは「地球上で生命を支える自然のシステム、すなわち水と土壌と生物を脅かしてはならない。」

科学技術の発展は、大量生産と大量消費によって支えられる社会をもたらし、人々の暮らしを快適なものに変えました。一方で、そのことによって自然環境全般や地球上の生態系(Ecosystem)にどのような影響が生じるかを検討して現代文明の進むべき道を考えることは、つねに後回しにされてきました。欲望を満たすこと、モノを消費すること、金が動くこと、経済が活発になること。こうした動き(メカニズム)に逆行する意見は不要とされていました。しかし状況は変わりました。わたしたちがもっとも恩恵を受けているこの地球自体が、ついに明確な警告を発し始めたからです。


『かけがえのない地球 365日空の旅』ピエ・ブックス)、これは一日一枚ずつ、世界各地の自然や動物そして人間の暮らしを航空写真で撮影したB5判変型794頁の大部の本です。撮影者は航空写真家のヤン・アルテュス=ベルトラン(Yann Arthus-Bertrand)。三年前、わたしが偶然この写真集を書店の棚で手にとったのはその美しい表紙のせいでしたが、しかし、本書に収録された一枚ずつの写真は、それぞれ単に美しいだけのものではありませんでした。各写真には対抗ページに短いコメントが添えられており、統計資料を引用しつつ、現代文明社会が今と同じことを続けた場合に、この写真にある風景が今後どのように変貌するかを予告・警告しています。「持続可能な開発」という言葉は、この写真集に掲載されているドミニック・ブールのエッセイに登場します。(2009年に再編集版『新365日空の旅 かけがえのない地球』も発行されました)

ヤン・アルテュス=ベルトランは、2009年には『HOME』という映画を制作しています。当時、アメリカで本作品のプレゼンテーションを行った際の講演映像(約14分ほど)がこちらです。日本語の字幕つきです。→ 「ヤン・アルテュス=ベルトランが広角で捉える壊れやすい地球」

ここで彼が述べている主張をまとめてみると、「この50年の間に、地球環境は人間の活動によって急激に変貌し、エネルギーや食料も、近い将来に今と同じレベルの消費や摂取を続けていくことは困難だという事実から目を背けてきた。わたしたちは、危機の意識を持つのが遅すぎた。しかし、まだ考え方を変えていくことはできるはずだ。」──ということになります。今、日本で、このメッセージから何を思い、感じることができるか。

映画『HOME』本編(約1時間33分)は、以下のyoutubeリンク先で全編を見ることができます。(ナレーションは英語ですが、字幕が出るので理解しやすいと思います)
http://www.youtube.com/watch?v=jqxENMKaeCU


日本語ナレーションをお求めの方には、国内盤DVDをおすすめします。→ 『HOME 空から見た地球』

「もし世界のイメージをよくすることができれば、世界をよくすることができるかもしれない」(ヴィム・ヴェンダース

あなたは知っていますか。“故郷”地球の物語を。
不衛生な水が原因で、毎日、5000人もの人々が死んでいることを――
現状のスピードで漁を続けると2050年までには海から魚が姿を消すということを――
生命というこの特別な奇跡が地球上に起こったのは、今からおよそ40億年前。
長い時をかけて、ゆっくりとゆっくりと育んできた豊かな自然を、生命を地球に誕生してたった20万年に過ぎない私たちが壊し、地球のリズムを狂わせてしまったのだ……。
世界遺産の美しい景色や、自然と共生する人々の営み、そして私たちの生活を支えるエネルギーを生み出す巨大な設備まで、地球のあらゆる局面を全編空から撮影した映像の数々。
まだ知らなかった地球に出会える感動のドキュメンタリー!

(堀内)