じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

ダイアローグ&コンサート「2050年から見る環境と芸術の未来」

三日前の金曜日、12月16日に、山口情報芸術センター [YCAM] にてダイアローグ&コンサート「2050年から見る環境と芸術の未来」が開催されました。
以下はライブ配信時のユーストリームの情報より。

2011年12月16日(金)19:00開演
※配信は18:30から開始

「2050年から見た文明」をテーマに、坂本龍一氏と文化人類学者、竹村真一氏によるダイアローグ(対談)と、初共演となるサインウェイヴ奏者、Sachiko M(サチコ・エム)とのコンサートを開催します。

第1部 坂本龍一 × 竹村真一(文化人類学者)
第2部 坂本龍一 × Sachiko M(音楽家/サインウェイヴ)

山口情報芸術センター [YCAM]
http://www.ycam.jp/

イベント詳細
http://www.ycam.jp/education/2011/03/post-37.html

印象的な部分から思い巡らしを少し・・
文化人類学者の竹村真一さんとの対談中、坂本龍一さんの話の中に、アーサー・C・クラーク著のSFの名作『地球幼年期の終わり』が登場しました。

地球幼年期の終わり』のあらすじは以下(沼沢洽治訳、東京創元新社〈創元推理文庫〉の紹介HPより)。

20世紀後半の、地球大国間の愚劣きわまる宇宙開発競争のさなか、突如として未知の大宇宙船団が地球に降下してきた。彼らは他の太陽系から来た超人で、地球人とは比較にならぬほどの高度の知能と能力を備えた全能者だった。彼らは地球を全面的に管理し、ここに理想社会が出現したのだ。だがこの全能者の真意は……? SF史上にその名を残す不朽の名作。

この対談のテーマは「2050年から見た文明」ですが、この『地球幼年期の終わり』から引用して坂本氏はこの10年〜20年の間に「人類幼年期の終わり」がやってきつつあるのではないかと感じるとおっしゃっていました。
ここで言う「人類幼年期」は何かというと、地球環境に対して無知だった人類が目先の利益を求めるためにやりたいことを手当たり次第行って自然を破壊している時期、ということ。
「先進国」のアメリカでは、ダムの建設をして自然を破壊した企業が今では逆にそのダムを取り壊して自然の川の状態に戻している、とのこと。ハッブル宇宙望遠鏡が宇宙に打ち上げられてから地球を客観的にみることができるようになったのも手伝って、環境破壊をしてきたことを自覚したのではないか?というようなことを竹村氏もおっしゃっていました。
自覚はしても改善を実行することは難しいことです。<成長>しているということでしょうか。

「自然に耳を傾ける」「自然に耳を澄ませる」というと比喩的な表現ではありますが、実際に森に入って人が耳を澄ますと、聴覚によって耳の器官で聞こえている音以上に五感で感じることによって様々な森の声を聞くことができる、という研究結果もあるのだそうです。
演奏家の東野珠実さんは、「人間が空を見上げるとき、無数の星の中から、見たい星を選んで見ている」という意味の事をおっしゃっていました。それが星座というものなのだと。ご参考リンク→普遍的な笙(しょう)と竽(う)の「調子」

そして、地球環境に存在しているあらゆる音の中で、私達人類は自分が聴きたい音だけを選んで聴いているのでしょう。

第2部で演奏されたサインウェイヴ奏者、Sachiko M(サチコ・エム)の発する音には、健康診断の聴覚検査時にヘッドフォンから聞こえてくる音にも似た感じを思い出しました。<自然に対して耳を澄ませる>とこういう音が聞こえるのかもしれない、というイマジネーションを掻き立てる芸術といえるのでしょう。

現場でご覧になった方のブログもありました→http://ameblo.jp/nabezo33/entry-11109050438.html
おまけリンク、環境が激変した2075年の地球の姿を描いた映画『ワールド・エンド』(約89分)→http://gyao.yahoo.co.jp/player/00653/v08107/v0809100000000525752/

(J)