じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

昨年の出来事

昨日で正月三が日が終わり、今日から今年の仕事始めとなる皆様も多いことと思います。
当財団はすみません、もう一日お休みを頂いて明日5日から。何かと用事の多い年末年始は本当にあっという間に過ぎてしまいますね。
さて、昨年末に当ブログを3日間担当、1年間を毎日のブログ記事によって振り返りました。本日はブログから離れ、私自身の昨年を振り返りたいと思います。

はじめに、昨年制作に携わった作品を発売日順にいくつかご紹介しましょう。

先ず、ここ数年間にわたって19世紀末から20世紀前半に活躍した伝説的な歌手達の名唱を収録したSPレコードからのデジタル・アーカイブを行ってきた「ノイズレスSPアーカイヴズ 伝説の歌声」CDシリーズ全14枚が、2月23日に完結しました。(写真は第14巻「懐かしき歌曲集」)


下記写真左奥は、1889年製造の円盤式レコード第一号。右手前は、その再生装置として製造された同年のグラモフォン第一号機。(いずれも、北海道新冠町立レ・コード館所蔵)

シリーズ詳細はこちらの検索ページで。

3月には、皆川達夫先生の監修・解説、ご自身が主宰する中世音楽合唱団の指揮もされたCDアルバム「箏曲『六段』とグレゴリオ聖歌クレド』」が発売となりました。野坂操壽先生の箏、久保田敏子先生にもご解説を頂いた本作は、名曲「六段」は、実は、グレゴリオ聖歌クレド」が原曲ではないだろうか?という、前代未聞の問題提起で、5月にはテレビ朝日の「題名のない音楽会」にも取り上げら、大きな話題となりました。

企画詳細はこちらの検索ページで。


 
この3月には「日本合唱曲全集」の新譜「白鳥/高嶋みどり作品集2」(企画詳細はこちら)と「頌歌/鈴木輝昭作品集4」(企画詳細はこちら)も発売となりました。


また、4年越しで制作を続けてきた江戸京子先生の「C.ドビュッシー 前奏曲集 第2巻/江戸京子」(企画詳細はこちら)も完成。





4月と8月には、ビクター時代から数えて60年以上制作を続けている、平多舞踊研究所監修による「ビクター運動会」「ビクター発表会」+「ヒットマーチ」アルバムが、昨年もレギュラー発売となりました。シリーズ詳細はこちらの検索ページで。


5月には、失われたと考えられてきたSPレコードからのデジタル・アーカイブCDアルバム「奄美しまうたの原点/中山音女〜幻の名盤復刻」が復刻されました。録音された昭和初期は、SPレコードの回転数が一定ではなく、また、電力事情も安定していない状況で、さらに盤面の状態も良好とは言えない稀少盤を再生しデジタル化する作業はなかなか困難でした。(企画詳細はこちらです)


この5月には、2009年末に急逝された中島勝祐先生の作品集第三集となる「松・竹・梅」も発売となりました。(企画詳細はこちら)





7月には「国民的歌手 藤山一郎全集〜テイチク・ビクター編〜」(企画詳細はこちら)、9月には「『甦る栄光の蓄音器』─ 銘器と名盤が奏でる日本の流行歌ベストセレクション[金沢蓄音器館開館10周年記念盤]」(企画詳細はこちら)と、いずれもSPレコードからの復刻企画が発売となりました。
 


10月には箏曲アルバムが3タイトル発売となりました。「安藤政輝 宮城道雄を弾く2〜箏独奏曲全集〜」。宮城道雄作品演奏の第一人者、安藤政輝さんによる宮城作品集の第二弾です。(企画詳細はこちら )「唯是震一 協奏曲を弾く」は、25年前に東京五反田ゆうぽうとで録音した東京交響楽団との協奏曲集に、30年前日本コロムビアで収録された1曲を加えての復刻でした。(企画詳細はこちら)
 

もう一枚は「大久保雅礼委嘱による—牛腸征司 作品集」。正派邦楽会を代表する弾き手のひとりとして活動を続けてこられた大久保さんのファーストアルバムです。(企画詳細はこちら)


11月には、丸3年間をかけて企画制作を進めてきた「明暗真法流本曲全集」が完成。京都明暗寺に伝えられた虚無僧尺八伝承のすべてを収録した、CD11枚組、譜本63曲のいずれもを特製桐箱に納め、A4判別冊解説書全108頁の大全集となりました。(企画詳細はこちら。三つ折り案内カタログを、PDFファイルでご覧いただけます)



さて、ブログ記事には掲載されなかった当財団の昨年の大きなトピックは、公益財団法人への移行でした。6月1日の「財団からのお知らせ」をご覧ください。
2000年から2008年にかけて行なわれた公益法人制度に関する制度改革の審議を経て、2006年3月に「公益法人制度改革関連3法案」を閣議決定、同年5月法案成立、すでに2008年12月から新しい制度に移行しています。その結果、これまでの財団法人・社団法人などから、5年間という定められた期限の中で新たな法人として発足しなくてはならなくなりました。現在もまだ多くの財団・社団が移行問題に取り組む中、当財団は外部専門家のお力を借りることなく6月1日に認可を受けることが出来ました。当財団として、これは本当に嬉しい、ありがたい出来事でした。

また昨年は東日本大震災によって多くの方々が亡くなられましたが、当財団においても、長年にわたって直接のご指導、ご教示、ご親交を賜った多くの方々がこの世を去られました。
1月には舞踊家左門左兵衛先生、2月には常磐津英寿先生ご令室シゲ子様、5月には宮城会の重鎮であられた小橋幹子先生、9月には長唄唄方の今藤文子先生、10月には当財団評議員を長らくお勤め下さいました箏曲家野村正峰先生、12月には作曲家三木稔先生。たくさんの懐かしい思い出を頂いた先生方に、心から哀悼の意を表したいと思います。

(理事長 藤本)