じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

雅楽「呼韓邪單于」と舞楽「蘇合香」


伶楽舎 雅楽コンサートNo.24
芝祐靖作品演奏会 その2

日時:
2012年1月26日(木) 19:00開演(18:30開場)
場所:
四谷区民ホール

演奏曲目:
伎楽より 呉女、崑崙、迦楼羅、他 (1980〜89年 横笛、細腰鼓、銅鑼、銅拍子)
斑鳩の風 (1991年 箜篌、笙)
二つの面 (1963年/1995年 笙、篳篥龍笛、琵琶、箏)
古典様式による新作雅楽組曲 「呼韓邪單于 〜王昭君悲話〜」(1999年 管絃16名、歌)

演奏:
伶楽舎
<客演>
佐々木冬彦箜篌) 「斑鳩の風」
下野戸亜弓(歌) 「呼韓邪單于」

チケット発売中
前売り・予約 2,500円 当日 3,000円
お問い合わせ先:
東京コンサーツ 電話 03-3226-9755  FAX 03-3226-9882
URL: (【東京コンサーツwebチケット】で購入可能)
「伶楽舎」のホームページでも受け付けています。


雅楽師の芝祐靖(しば すけやす)さんが音楽監督を務める雅楽団体「伶楽舎(れいがくしゃ)」の次回公演日が二週間後に迫ってまいりました。今回のプログラムは第二回目となる芝祐靖さんの作品展で、代表作といってよい雅楽の大作『呼韓邪單于(こかんやぜんう)』の再演があります。

この作品の第一の特徴は、雅楽のなかに独唱で声楽を導入している点です。本作は絶世の美女、王昭君(おうしょうくん)の悲話を音楽化したもので、山田流箏曲下野戸亜弓さんが王昭君の内面を歌います。また、王昭君が仕えていた漢の元帝と、王昭君の夫である匈奴の王、呼韓邪單于と、そして王昭君の三人の心のやりとりは、龍笛王昭君)と篳篥元帝、呼韓邪單于)の演奏でも表現されています。(下野戸亜弓さんの昨年のリサイタルについては、当ブログでも取り上げています→ <下野戸亜弓 箏曲リサイタル2011>

もうひとつの特徴は、本作が五線譜ではなく、伝統的な雅楽譜で新たに作曲されているという点です。現代雅楽のほとんどは、クラシック系のいわゆる現代音楽の作曲家によって五線譜で作曲されています。しかし、もともと伝統楽器の表現原理は西洋音楽的な発想とは別種なものであり、五線譜で作曲するということは、いわば西洋音楽(現代音楽)的な発想で雅楽の編成のための曲を創ることを意味しています。一方、芝祐靖さんは、雅楽とそこで使用される楽器を隅々まで知悉(ちしつ)しているがゆえに、現行の雅楽からは失われてしまった「雅楽の可能性」を深く思い描くことができ、また雅楽本来の発想の延長線の上で伝統的記譜法を使った作曲が可能であり、同時にそれが許されている本当に数少ない存在です。一言でいえば、芝祐靖さんの作品はまさしく雅楽なのであって、それは「現代音楽」でも「現代雅楽」でもない、新しい雅楽なのです。

芝祐靖さんは、宮内庁の楽部で長く活躍し、他にも国立劇場公演での廃絶曲の復曲や新作雅楽の初演にも関わられました――カールハインツ・シュトックハウゼン Karlheinz Stockhausen 作曲:『ヤーレスラウフ(歴年)−リヒト(ひかり)より(Der Jahreslauf - Licht)』(1977)〔初演時のタイトルは、『四人の舞人と管絃のための 「LICHT-HIKARI-LIGHT」 DER JAHRESLAUF −歴年− THE COURSE OF THE YEARS』でした〕黛敏郎作曲:『昭和天平楽 一具』(1970)、武満徹作曲:『秋庭歌(In an autumn garden)』(1973)および『秋庭歌 一具』(1979)、ジャン=クロード・エロア(エロワ) Jean-Claude Eloy作曲:聲明の声と伶楽の楽器による『観想の焰の方へ(A l'approche du feu meditant……)』(1983)等々――。また、ご自身も数多くの作曲を手掛けていて、たおやかな息吹を伝えるその音楽世界は、雅楽界のみならず幅広い音楽愛好家から注目され、受け容れられています。芝祐靖さんは2003年より日本藝術院会員で、2011年には文化功労者に選ばれています。


 
これまではごく限られた機会でしか聴くことができなかった芝さんの作品が、伶楽舎の企画によって、まずはこうした演奏会のかたちで、そして当財団から昨年発行したCDのかたちでも、多くの皆さまにお聴き頂くことができることを慶びたいと思います。CD「芝祐靖の音楽」は、次の2枚がお求めいただけます。『古典雅楽様式による雅楽組曲「呼韓邪單于」 ―王昭君悲話―』(VZCG-748)、そして『復元正倉院楽器のための 敦煌琵琶譜による音楽』(VZCG-749)。これらのCDは一般レコード店では在庫されていることが少なく入手困難ですが、当日はコンサート会場で販売される予定です。1/26(木)19時、四谷区民ホール。どうぞお聴き逃しのないように。



 

国立劇場 2月舞楽公演

舞楽
大曲 蘇合香(そこう) 一具 <後篇> 破・急
納曾利(なそり)
仁和楽(にんならく)

出演:
宮内庁式部職楽部

日時:
2012年2月25日(土) 14:00開演
場所:
国立劇場大劇場
チケット(等級別料金)
1等席: 4,500円(学生: 3,200円)
2等席: 3,600円(学生: 2,500円)
前売開始日 電話・インターネット予約開始=1月11日(水)午前10時〜 窓口販売開始 1月12日(木) 注:受付時間は午前10時〜午後6時
お問い合わせ先:
国立劇場チケットセンター(午前10時〜午後5時)
0570-07-9900 /03-3230-3000(PHSIP電話
URL:

雅楽関連のもうひとつのお薦め公演が、昨年と今年の二回にわたって国立劇場で全曲が演奏される大曲『舞楽「蘇合香」(そこう)』です。昨年の前半部の公演については当ブログでもご紹介していました → <「蘇合香(そこう)」二年がかりで上演>(2011年2月23日)

今回、国立劇場では、前回を見逃した方や、もう一度観たいという方のために、演奏当日の開演前の12時から、昨年度の公演の記録映像を上映する「映像鑑賞会」を開催するそうです。詳しくは国立劇場のこちらのページで。「蘇合香」についての詳しい説明も掲載されています。→ 「映像で見る 大曲 蘇合香 一具<前篇>」



国立劇場開場45周年記念 映像鑑賞会
映像で見る 大曲 蘇合香 一具<前篇>

日時:
2012年2月25日(土) 12時 (13時15分終演予定)
場所:
国立劇場大劇場

大曲 蘇合香 一具<前篇>
   序一ノ帖・三ノ帖・四ノ帖・五ノ帖

出演:
宮内庁式部職楽部
平成23年2月26日収録)

チケット(等級別料金)
一般 500円  学生 350円
前売開始日 電話・インターネット予約開始=1月11日(水)午前10時〜
窓口販売開始 1月12日(木) 注:受付時間は午前10時〜午後6時
お問い合わせ先:
国立劇場チケットセンター(午前10時〜午後5時)
0570-07-9900 /03-3230-3000(PHSIP電話
URL:

次の舞楽「蘇合香」の公演は、おそらくはまた40年近く後のことになるかもしれません。舞を伴わない管絃のみでの演奏は伶楽舎によって行われる可能性もありますが・・・。雅楽では同じ曲でも舞なしの管絃吹(かんげんぶき)と舞のある舞楽吹(ぶがくぶき)[舞立(まいだち)]では、楽器編成や演奏上のニュアンスが違います。昨年の国立劇場大劇場での舞楽「蘇合香」前半の公演はほぼ満席でした。チケットの確保はどうぞお早めに!

(堀内)