じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

「奄美しまうたの原点」が芸術祭優秀賞に


平成23年度(第66回)の文化庁芸術祭の受賞者が1月11日に発表され、当財団のCD作品「奄美しまうたの原点/中山音女 —幻の名盤復刻—」がレコード部門で優秀賞を受賞しました。じゃぽ音っと作品情報:奄美しまうたの原点/中山音女〜幻の名盤復刻〜(2枚組) /  中山音女
このCDにつきましては、稀少なSP盤の復刻ということで、企画の段階から本ブログでも紹介し、皆さまにご協力を呼びかけてきました。メールやツイッターなどを通して多くの情報や励ましをいただき、たくさんの方の応援のもとにできあがった作品がこのような賞を受けることになり、感謝の気持ちでいっぱいです。
奄美しまうたの原点」は、奄美のウタシャ(唄者)とよばれた中山音女(なかやま おとじょ 1891ー1970)さんが昭和初期に吹き込んだ全18枚のSP盤のうち、近年発見された14枚に収録されていた27曲を復刻した2枚組のCDです。
中山音女さんの若き日の歌声は、奄美出身のロシア文学者であり、奄美群島の日本復帰に尽くした昇曙夢(のぼり しょむ 1878ー1958)氏の著書『大奄美史』(1949年刊行)で絶賛され、世の人の知るところとなりましたが、昭和初期に私家版としてわずかに製造された全18枚のSP盤に記録されたにすぎませんでした。
その昇氏の遺品であるSP盤コレクションの中に、14枚もの再生可能な音女さんのSP盤があることが近年わかり、CDに復刻することが計画されました。できれば全18枚の完全復刻盤として制作したいと、残りの4枚の探索をはじめました。
関係者やSP盤の所蔵機関などにあたるとともに、こちらのブログやツイッター、新聞紙上でも広く呼びかけましたが、残念ながら見つからず、完全盤での発売は断念せざるをえませんでした。けれども、しまうたの古い形を伝える貴重な27曲を紹介することができ、それがこのような形で評価されたことは、本当にうれしいかぎりです。
芸術祭優秀賞の受賞理由には、「かなり聴き込まれたSP音盤からの復刻は技術的に困難をともなうが、当時の音声を彷彿とさせる聴きやすいCDとなっている。現代のウタシャの歌唱法とはかなり異なり、しまうたの変遷を知る上で貴重な資料である。」とあります。
担当者の汗と涙の探索のいきさつは随時ブログでお伝えしてきましたので、ちょっと振り返ってみたいと思います。

じゃぽ音っとブログ2010年10月15日
「情報求む=奄美しまうた・幻のSP盤」
・「おたずね・さがしもの」ということで4枚のSP盤の探索ご協力の呼びかけをしました。

じゃぽ音っとブログ2010年12月29日
「中山音女のSP盤 その後」
・担当者による「年末ドタバタ調査報告記」。

じゃぽ音っとブログ2011年2月16日
「中山音女CD 4/20発売」
・4枚のSP盤の探索をあきらめ、14枚分の復刻で進めることに。

じゃぽ音っとブログ2011年3月24日
CD「奄美しまうたの原点/中山音女〜幻の名盤復刻〜」発売は5月11日に延期
・いよいよ4月発売という目前で、大震災の影響による延期。ただし、うれしい誤算も。

見守ってくださった方々に、重ねてお礼申し上げます。

なお、今年度の芸術祭の音楽部門では、当財団が後援した公演のうち「としみつの会」の杵屋利光さん(長唄唄方)が大賞、「山勢麻衣子演奏会」の山勢麻衣子さん(山田流箏曲)が新人賞を受賞しました。私はたまたまどちらも受付のお手伝いをしていて、じっくり聴くことはできなかったのですが、こちらもうれしい結果です。
今年度の芸術祭賞受賞一覧→平成23年度(第66回)文化庁芸術祭の決定について(文化庁)
また、昨年度(第65回)の文化庁芸術祭賞レコード部門の受賞作品と、当財団で発行した芸術祭受賞関係作品についてのご紹介は、こちらのブログ記事に詳しく出ています。→第65回文化庁芸術祭賞決定 - じゃぽブログ

(Y)