じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

獅子舞

新国立劇場主催演劇公演 「天守物語」(2011年11月公演)が、1月15日(日)午後3:00〜5:00にNHKにて放送されました。昨年のブログでご紹介させて頂いた時には劇場で鑑賞した直後でしたが、一昨日の放送は訪問先のテレビで後半部分から視聴しました。
劇中で天守閣に祀られている獅子頭天守に上がって来た武士達に取り囲まれると突然動きだして武士達を蹴散らします。暴れ回る獅子を見ているうちに獅子舞を思い出しました。お正月のせいでしょうか。
東京では松の内は1月7日までとされますが、本来は小正月の15日までを「松の内」というそうです。関西のほうも松の内は15日までだそうですし、地方によって異なるようですが。今でも土地によって元旦に獅子舞や万歳の門付けがやってくるところもあるのでしょう。小沢昭一さんが日本全国を取材なさった「日本の放浪芸」シリーズ(ビクター:CDもDVDもあり)は秀逸なドキュメントで、その中で各地方の獅子舞や万歳の様子も聞くことができます。
獅子舞は古代のインドやチベットに起源をもち、広く東アジアに見られる魔除けの芸能で、獅子頭の口をカタカタと打ち合わせた音が、厄払いになるそうですよ。
歌舞伎でも通称『鏡獅子』でおなじみの「春興鏡獅子」(しゅんきょう かがみじし)は初春の演目ですね。数年前に歌舞伎座でお正月に鑑賞した覚えがあります。
以下は独立行政法人日本芸術文化振興会の「歌舞伎への誘い」に掲載の「春興鏡獅子」作品紹介より。

明治時代に9代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)が、初演した長唄舞踊(ながうたぶよう)です。
小姓の弥生(やよい)が将軍の前で踊りを披露し、飾られた獅子頭を手にすると獅子の精が乗り移る、という内容です。前半は気品のある女方、後半は荒々しい獅子の精という対照的な役を1人で踊り分ける点に見どころがあります。
9代目團十郎の死後、上演が途絶えていましたが、6代目尾上菊五郎(おのえきくごろう)が復活させて当り役として以降、現在でもたびたび上演されるようになりました。

そういえば、小姓の弥生は前半は踊ることを恥ずかしがっていましたが、踊るうちに獅子が乗り移ると後半では荒々しい踊りになっていました。解説にある「将軍の前で踊りを披露し」というのは、江戸城で嘉例の鏡開きの行事で獅子の舞が演じられる、という筋です。歌舞伎の「獅子物」は、能の獅子の舞の「石橋」を由来として「石橋物」とも言われます。「連獅子」などもありますね。
1月14日のブログで「都民芸術フェス、第42回邦楽演奏会」が紹介されていましたが、その演目に長唄の五段目角兵衛獅子も入っていました。本来角兵衛獅子は様々な理由で親と離れ離れになった子供たちを集めて獅子舞を仕込み、大道芸人として諸国を勧進して歩く旅芸人だったそうです。「越後獅子」とも言われます。
こちらは[長唄]の越後獅子です→じゃぽ音っと作品情報:邦楽舞踊シリーズ[長唄] 越後獅子/松の緑 /  芳村五郎治 他

(J)