じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

鳥養潮 『存亡の秋(とき)』、再演

 

スパイラル聲明コンサートシリーズ vol.20
「千年の聲」20回記念公演 鳥養潮作曲『存亡の秋』


日時:
2012年1月24日(火)・25日(水) 開場20:00|開演20:30
場所:
スパイラルガーデン(スパイラル1F)
出演:
声明の会・千年の響
料金:
全席自由 前売 4,300円 当日 4,500円
チケット発売中(1/18現在 まだチケット有り)
取り扱い先:
チケットぴあNPO法人魁文舎[KAIBUNSHA]スパイラルオンラインストア
お問い合わせ先:
NPO法人魁文舎 03-3275-0220
スパイラル 03-3498-1171


ニューヨーク在住の日本人の女性作曲家・鳥養潮(とりかい うしお)さんは、独自な活動で知られる大変ユニークな存在で、その作品の特徴は、きわめて精神性が高いのと同時に、音(サウンド)のなかに潜む奥深いエネルギーを引き出したり甦らせたりする試みを感じさせるものが多く、わたしの印象を一言でいえば、「日常を超えた世界」を実感させる音楽ということになります。また、演劇性や祭祀性といった要素も大きな特徴といえるかもしれません。これは特に演奏者の身振りや動作が強調されていない作品でも感じることなので、おそらく、鳥養さんの音楽作品それ自体のなかに、儀礼や祈りといった専心的な態度を喚起させる要素が含まれているからではないか、そんなふうに思います。

20世紀後半から現在まで、テクノロジーの進歩によって音楽を聴く道具や機器はますます小型化・軽量化され、音楽を聴くことが空気を吸うのと同じように特別に意識されることなく、それ自体も手軽な体験になってきたように思います。鳥養さんの作品は、そうした手軽な「ながら聴き」とは完全に無縁なところにある音楽です。鳥養さんの作品をCDではなく演奏される現場、つまりライヴで聴くことは、その求心的な存在感と相互浸透する体験となって、深く記憶に残るものになるだろうと思います。

上に掲載した今回の公演チラシ内から、以下引用します。

2001年 9.11の同時多発テロを悼み、ニューヨーク在住の作曲家鳥養潮が祈りを込め作曲した聲明曲「存亡の秋」。その10年後今度は大震災によって、私たちは不慮の死に直面しました。けれどまた、誰もが老いとともに最期が訪れる冬の日を迎えます。逃れることのできない死に想いをはせる人生の秋。釈迦は、死をみつめることによって生きることを説きました。一方、遠い彼の地のアメリカンインディアンは、ささやかな日常の幸福の中で、穏やかに死を向い入れる境地を詩に謳っています。どのように死を受け入れるか、そして死と隣り合わせの生をどう生きるか? 「存亡の秋」は、その智慧と生の覚醒を唱う生命の讃歌です。動物も草木も人間も、異なる民族も等しく、限られた時を共に生き、生命を全うする生き物。願いを込めて生きとし生けるすべてのものに捧げられる、僧侶の祈りの声をお聴きください。


声明の会・千年の聲」は、当初1997年の設立時には“「聲明四人の会」+シャブダ”と名乗っていましたが、後に現在の名称に改められています。その中心で長くご活躍されている新井弘順さんの2007年のインタヴューが、国際交流基金のサイト内にあります。→ 「アーティスト・インタヴュー:千年の時空を越えて劇場で親しまれる仏教音楽『声明』の世界/新井弘順」(全3ページ)


今回の公演は朝日新聞でも取り上げられています。→ 「声明「存亡の秋」、10年ぶり再演 東京・表参道」

音楽評論家の小沼純一さんの記事。→ 『存亡の秋(そんぼうのとき)』(小沼純一のクラシック+[プラス])


この作品『存亡の秋』は、国立劇場の委嘱作品を中心に楽譜とCDをセットにして春秋社から出ている全20巻シリーズ『現代の日本音楽』)の第16巻のなかに、『阿吽の音(あうんのこえ)』(国立劇場委嘱作品)と一緒に収録されています。収録音源は、『存亡の秋』が、2002年10月30日 長野県民文化会館中ホールでの初演時のライヴ録音でトータル・タイム79分55秒(当財団による録音ですが、後述するCD盤とは別音源)。『阿吽の音(こえ)』が、1995年11月15・16日 国立劇場小劇場での初演時のライヴ録音でトータル・タイム59分06秒。
 

『阿吽の音』が国立劇場で初演された時の、安芸光男さんのレポート記事をこちらで読むことができます。→ 「国立劇場「声明」公演/三宅榛名・鳥養 潮の声明作品初演」


 
『存亡の秋』『阿吽の音』の両作品とも、上記春秋社のCDとは別音源のCDが、当日本伝統文化振興財団から発行されています。『存在の秋(とき)』(VZCG-563)は、2004年9月10日松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)での収録、トータル・タイムは76分01秒。
『阿吽の音』(VZCG-729)は、2009年に再発したSHM-CD盤で入手可能です(以前発売されていた通常CD盤は完売)。この『阿吽の音』は、192KHz/24Bit、2チャンネル・デジタル・ダイレクトによる高品位スタジオ録音盤です。このとき作曲者は作品の一部を改訂して、本CD収録ヴァージョンを決定版と称しています。トータル・タイム71分03秒。



また『邦楽演奏家 Best Take 西潟昭子 II』(VZCG-66)には、鳥養潮作曲の「三絃ソロの為の<TROIS>」が収録されています。


  
こちらは、以前ビクターから発売されていたCD『GO WHERE? 箜篌/鳥養潮』(VDR-1026 廃盤)。パリのIRCAMに務めるデヴィッド・ウェッセルをプロデューサーに迎えて制作された、鳥養さん自身が演奏する三味線や箜篌(くご)などの伝統楽器とコンピュータ音楽、電子音楽との融合で構成された大胆な実験音楽です。一曲を除いてIRCAMのスタジオで制作。録音は1985年3月から6月。収録作品は、1. SHAMAMA/2. Junk/3. SEI/4. GO WHERE?/5. 微縒 – MIYORI。

鳥養さんのプロフィールは、上記2枚の当財団発売CDのリンク先、ホームページ「じゃぽ音っと」に記載されています。

(堀内)