じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

アースダイバー


写真は当財団のすぐ近くの西神田公園にある看板、以前にも登場したかもしれません。右側が文字部分の拡大になります。2003年と1856年のこのあたりの地図が掲載されていますね(夜間撮影でうまく写っていずすみません)。
外国に行くと不思議な風景に「どうやって出来上がった街並みだろう」など、よく思っていたのですが、考えてみれば東京も結構不思議です。このブログには<東京散歩>のカテゴリーがあるのに、今までこの本をご紹介していなかったのは片手落ちでした。
中沢新一・著『アースダイバー』
オビの言葉は「縄文地図を片手に、東京の風景が一変する散歩の革命へ! 見たこともない、野生の東京が立ち上がる。
出版社HPより→http://www.bookclub.kodansha.co.jp/books/topics/earthdiver/
著者がチュニジアを旅行(2000年ころか)したときのエピソードから始まるプロローグの中に、アメリカ先住民のアースダイバー神話について書かれています。そのアースダイバー式の心構えで東京の街を散歩するとき、著者は特別な地図を持ち歩いているそうです。
縄文海進期という、海水がかなり内陸まで入り込んでいたころの東京の風景はこうだったろうという、地質学に基づいたアース・ダイビング・マップというその地図がこの本には付いていて、これを意識して現在の東京を歩いてみると、確かに太古の風景が眼前に立ち現れてきたりするのです。その当時の東京湾はかなり複雑にリアス式海岸のように入り江をつくっていたようです。
新宿〜四谷の章では新宿を語る伝説がワーグナーの世界と重ねて連想され、坂と崖下(東京には坂が多い)に関する章では歌舞伎役者を(怪物的な美の代表としての)金魚的なものとして記述していたりして、面白く読めます。

多摩美術大学中沢新一ゼミなどによる→アースダイバーマップBis

本の55ページには一昨日ご紹介した『日本振袖始』についても触れられていますね。
こいつぁ春から縁起がいいわえ - じゃぽブログ

太古の地形が現在の都市の成り立ちにまで影響しているという・・・なぜ日本と欧米では、通行する側とか、道路網の広がり方とか、住所の付け方とか、いろいろ違うのか。都市構造論みたいなものもいつか勉強してみたいものです。

(J)