じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

冬の雁木通りで、「ごぜさんの門付け」

今週末の2月11日の土曜日に、上越高田でこの時期に恒例となった瞽女さんのイベントがあります。「高田瞽女の文化を保存・発信する会」のホームページに詳しい案内がありますので、以下ご紹介いたします。

冬の雁木通りで、「ごぜさんの門付け」と「瞽女宿ライブ」を再現します。
昔の高田の風情を味わい、高田瞽女の歴史に思いをはせましょう。

門付け(見学自由)
開催日:2月11日(土) 午後2時半〜3時半頃まで
開催場所:本町6丁目高田小町から、仲町6丁目周辺の雁木通り
 国の登録有形文化財めぐり:幸村家、ますや、麻屋高野

瞽女宿ライブ(70名限定 入場無料、入場整理券あり)
開催日:2月11日(土) 午後4時開場、4時半開演、6時終了
開催場所:本町6丁目 高田世界館
演者:月岡祐紀子  [高田瞽女の記録短編映画も上映]

共通の問い合わせ:きものの小川 TEL: 025-522-3400


現在、高田には瞽女さんはもういません。月岡祐紀子さんをはじめ、瞽女唄を継承されている方は瞽女ではありません。だから本物の瞽女さん、たとえば高田であれば、杉本キクエさんが長く親方を務めた高田瞽女の録音に耳を傾ける体験は、特別なものがあります。それは、人の心の最も深い場所にしみ入るようなしみじみとした暖かさと楽しさと同時に、そのさらに奥に流れている視力を奪われてしまった運命への寂しさや無常観などが何層にも溶け合いながら胸に迫り、しかし、その希望(あるいは感謝)に満ちた歌声は生きることの豊かさと尊さを伝えてくれるものです。わたしはしょっちゅう高田瞽女の録音に耳を傾けていて、当財団でも高田瞽女の記録音源をいつかCDで復刻したいと願っていますが、わたしの力不足でなかなか実現できず、高田瞽女に関心のある方々、とりわけ高田へ伺うたびに優しく接してくださる高田瞽女の文化を保存・発信する会の皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

ちょうど二年前のこの時期に、新潟は40年振りという大雪で車も電車も交通機関は大混乱。わたしが乗り込んだ信越本線が、大豪雪のため途中の黒姫駅までしか行かず、結局運良く相乗りできたタクシーで猛吹雪のなかを高田まで行ったことは生涯忘れられない思い出です。大雪に覆われた高田の町は、外を歩く人の姿はほとんどなく、わたしはひとりで雁木の下を歩きながら、でも、すぐ隣に誰かがいる気配を感じて、そのぬくもりに驚いていました。雁木の暖かさ、それは、この高田の町の人々の暮らしを支える相互扶助の心のあらわれでもあるのだと、その時に実感を伴って気付かされました。

昨年の11月に高田へ行ったとき()、生涯をかけて斎藤真一画伯の絵を蒐集してきた北海道の池田さんが、そのほとんどすべての絵を上越市(高田は現在は上越市と合併)に寄贈し、それを記念した講演のなかで、日本各地に瞽女さんがいたのに高田の瞽女が昭和後期まで受け継がれて残ったのは、おそらく高田という町が人への思いやりに溢れた土地柄だったからではなかったか、と仰っていたのが強く印象に残りました。感動しました。

そうした高田の町で聴く瞽女唄は、継承者の方々の唄であっても、この土地独自の力と合わさって、やはり特別なものを感じます。聴きにきてよかったなあと実感できるのです。それで、わたしは、瞽女唄のイベントがあると、高田へと足が向かってしまうのです。

しかし今回は別の用件と重なったため、雪の高田には伺えません・・・。2月11日の土曜日は、鈴木俊哉さんが、吉村七重さんと宮田まゆみさんと共にご出演する下記のコンサートが開催されます。

この公演の情報については回をあらためて、こちらの投稿でお知らせいたします。→

(堀内)