じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

満開の青山で

昨日今日と、東京はお花見日和でした。この冬は例年より寒く春の訪れが待ち遠しかったのですが、ここにきて一挙に満開となりました。

そんな満開の週末、青山にお墓参りに行ってきました。青山霊園は隠れた桜の名所と聞いていましたが、中を貫く道が桜のトンネルになっていて、本当にみごとでした。お墓参りより散策の人のほうが多かったのではないでしょうか。さすがに宴会は見かけませんが、桜の下でお弁当を食べている人もいました。

お参りしたのは2006年4月に97歳で亡くなられた、音楽学者で文化功労者の吉川英史(きっかわえいし)先生のお墓です。毎年4月にお参りしているという友人に誘われ、今年3月に奥さまが満100歳で亡くなられたこともあり、ご挨拶にと伺ってきました。
吉川英史先生は日本音楽に関する著書が数多くあり、内容も専門書から一般向けの鑑賞の手引きまで多彩です。また、放送や講演などでも邦楽についてよくお話されていました。
宮城道雄記念館の館長を務めていらした頃、日本音楽界の長老としてパーティーなどでよくスピーチされていたのを伺いましたが、いつもウイットの効いたオチがついていて、参加者を喜ばせていたのを思い出します。文化功労者顕彰記念出版の自伝「謝々天庵主人回想録」(邦楽社、1994年)では、ご自身を「謝々天庵主人」と称しています。「謝々天」は天に感謝という意味だそうですが、お箏を習うときの口唱歌「シャシャテン」に掛けているんですね。

1993年、当財団の前身であるビクター伝統文化振興財団が設立されたときには、文化庁に働きかけるなどさまざまに尽力され、当初から理事を努めてくださいました。上の写真は財団が設立許可を受けたときに文化庁(?)で撮影された一枚です。右から2番目が吉川先生、中央が初代理事長の波多一索さんです。

青山の墓地は歴史があるので、政治家や文化人、日本の近代化に寄与した外国人のお墓もあります。歌舞伎の市川団十郎家の墓所を見つけました。

桜とお墓と向こうには六本木ヒルズ。吉川先生のおかげで、今年は思いもかけずいいお花見ができました。

(Y)