じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

ボストン美術館「日本美術の至宝」展

GWも今日で終わりですが、いかがおすごしでしたか。今年はお天気が変わりやすく、今日も都内では午後、突然空が暗くなり、雷雨がありました。

GW前半の一日、上野の東京国立博物館で開かれている特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」に行ってきました。ハナミズキツツジが咲いて、初夏のような日でした。

アメリカから里帰り中の約90点の「まぼろしの国宝」のことは2週間前の記事にも少し書きましたが(→「まぼろしの国宝」展、二つ - じゃぽブログ)、期待以上の作品ばかりで、しっかりと見てきました。盛りだくさんですが、全体にゆったりとした見やすい展示でした。また、休日の午後にもかかわらず、それほど混雑していなかったのも幸いでした。
全体の構成は次のとおりです。

第一章 仏のかたち 神のすがた
第二章 海を渡った二大絵巻
第三章 静寂と輝き−中世水墨画と初期狩野派
第四章 華ひらく近世絵画
第五章 奇才 曽我蕭白(そがしょうはく)
第六章 アメリカ人を魅了した日本のわざ −刀剣と染織

どれも本当に名品ばかりですが、なかから3つ、とくに気に入ったものをご紹介します。
まず、第二章の「吉備大臣入唐絵巻」(平安時代・12世紀後半)。後白河法皇が制作させた絵巻だそうで、遣唐使吉備真備が唐で出会った奇想天外なお話が繰り広げられます。表情豊かな絵の面白さ、色の鮮やかさにも驚かされました。「え!これってマンガじゃない」と言っている学生カップルの声が聞こえました。もう一つ展観されていた「平治物語絵巻」も合戦の人馬や迫りくる炎に混乱する人々の書き込みが細かく、いつまで見ていても飽きません。
2つめは第一章の「弥勒菩薩立像(みろくぼさつりゅうぞう)」(快慶作 鎌倉時代・文治5年(1189))。1メートルほどの背丈ですが、姿の美しさに見入りました。もとは奈良の興福寺に伝わったそうですが、今は日本のお寺ではなく、アメリカの美術館にいらっしゃるというのが不思議な感じです。絵画では象に乗った「普賢延命菩薩像」(平安時代・12世紀中頃)も迫力がありました。また、以前根津美術館でいくつか観た(→「春日の風景」展)「春日宮曼荼羅図」が、ここにも出ていました。
3つめは第六章の染色作品。能装束や女性の着る小袖が10点ほどあり、刺繍のように見える模様がじつは織物であることに驚かされます。デザインも色も美しく贅沢で、実際に身につけたものかもしれませんが、どれをとっても一級の美術品です。
3つと言いつついろいろ挙げてしまいましたが、このほかにも、この展覧会の目玉である「雲龍図」をはじめとする曽我蕭白の作品群や、尾形光琳の「松島図屏風」、長谷川等伯の「龍虎図屏風」、第三章の雅な狩野派と、きりがありません。
保存を考慮して慎重に展示するため、ボストン美術館に出かけても、いつもこれだけのものが見られるわけではないとのこと。そういう意味でもオススメの展覧会です。
東京国立博物館は6月10日(日)まで。そのあと名古屋ボストン美術館、2013年1月から九州国立博物館、4月から大阪市立美術館に巡回の予定とのことです。
今朝のNHKEテレ日曜美術館」で特集していましたが、再放送は来週5月13日(日)の夜8時からです。これから出かける方はぜひチェックを。

(Y)