じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

日本伝統文化振興財団賞記念演奏会

「第十六回日本伝統文化振興財団賞」の贈呈式と記念演奏会は6月5日、無事に開催することができました。ご来場くださった皆さま、ありがとうございます。

贈呈式に続く記念演奏会の第一部では、「日本伝統文化振興財団賞」の受賞者、清元栄吉(きよもと えいきち)さんと、今年から新設された「中島勝祐創作賞」の受賞者、清元柴葉(きよもと しよう)さんの披露演奏がありました。
清元栄吉さんは清元三味線方として古典の演奏に定評がありますが、作曲家としても伝統を活かした清新な作風で注目されています。今回の贈賞理由はその2点であることから、古典の「六玉川(むたまがわ)」と自作の「触草〜クサニフレレバ」の2曲を披露演奏されました。
清元は歌舞伎の音楽として聞いたことがあるという方が多いと思いますが、「六玉川」は演奏会用に作られたのだそうで、清元の曲としては例外的といえるほど三味線が活躍します。リハーサルでしか伺うことができなかったのですが、「さらし」の合の手の部分など、お箏の米川敏子さんとともに切れのいい演奏をされていました。
この曲の歌詞の終わりには「実(げ)に玉川の流れより 澄める心の清元の すさみに残す筆の跡 栄え久しくめでたけれ」とあって、清元の繁栄を祝う言葉で締めくくっているのですね。清元づくしとなった受賞披露にふさわしい曲でした。
そして2曲目は清元栄吉さん作曲の「触草〜クサニフレレバ」。篳篥(ひちりき)、笛、箏、十七弦、三味線二挺という邦楽器による組曲で、初演時(平成15年)のプログラムノートには次のように記されています。

「クサニフレレバ」という表題から呼び起こされた、歌詞を持たない抽象のスケッチ。具体的な情景やストーリーがあるわけではないのですが、どこか「不思議の国のアリス」のような迷宮的なイメージが付き纏います。プロローグ〜雨後〜呪術〜インターリュード〜ダンス〜彼岸〜エピローグ の七つの部分からなる組曲

栄吉ワールドともいうべき独特の世界にひきこまれた人も多かったようです。美しい響きが心地よかった、映画音楽のようだった、といった感想も寄せられています。
受賞披露演奏の最後は「中島勝祐創作賞」を受賞した清元柴葉さん作曲の「山姥(やまんば)—夕月浮世語(ゆうづきうきよがたり)—」。新作ですが、浄瑠璃をたっぷりと聞かせる清元らしい作品で、こちらもたいへん好評でした。清元柴葉さんが自ら三味線を弾き、浄瑠璃にはご夫君の清元梅寿太夫さんとご子息の清元成美太夫さんも参加されました。
いずれも私たちスタッフは客席でゆっくりと聞くいとまはなかったのですが、帰り際に、またあとからメールや電話で感想を聞かせていただき、ありがたくうれしく思っております。
第二部は一転して、「若き継承者たち」と題して民謡の郷みん’S(きょうみんず)と新・純邦楽ユニットWASABI(わさび)が登場しました。清元とはまた別の世界ですが、両方とも日本の伝統文化の流れを受け継ぐもの。めったにない組み合わせですが、意外性を楽しんでくださった方も多かったようです。
当日のプログラムを紹介します。

第一部 受賞披露演奏
清元「六玉川」
(箏手付 四世清元梅吉 作調 福原徹彦・藤舎呂英)
 浄瑠璃 清元志寿子太夫 清元一太夫
 三味線 清元栄吉
 箏   米川敏子
 笛   福原徹彦
 小鼓  藤舎呂英

「触草〜クサニフレレバ」
(作曲 清元栄吉)
 篳篥  中村仁美
 笛   藤舎推峰
 三味線  清元栄吉 松永忠一郎
 箏    中川敏裕
 十七弦  西 陽子

清元新作「山姥—夕月浮世語—」
(作曲 清元紫葉  作詞 長田午狂  作調 望月喜美)
 浄瑠璃 清元梅寿太夫 清元喜美太夫 清元成美太夫
 三味線 清元紫葉 清元公寿郎
 笛   福原徹彦
 小鼓  藤舎呂英
 大鼓  望月喜美
 太鼓  藤舎円秀

第二部 若き継承者たち

郷みん‘S (きょうみんず)
  おもだか秋子〈唄〉
  椿正範〈津軽三味線
  松浦奏貴〈踊り〉
「南部俵積み唄」
「淡海節〜小諸馬子唄入り〜」
田原坂
「黒田武士(吟詠・浪曲入り)」
津軽あいや節(曲弾き)〜古調あいや節」
津軽よされ節」

WASABI(わさび)
  吉田良一郎津軽三味線
  元永拓〈尺八〉
  市川慎〈箏・十七弦〉
  美鵬直三朗〈太鼓・鳴り物〉
「東雲」
「烈光」
「航海」
「ふるさと」
「KOKIRIKO」

(Y)