じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

東京[無形文化]祭より「語る」―節の競演

昨日に続き、東京[無形文化]祭のご紹介です。7月27日(金)、このフェスティバルの最後を飾る公演です。
http://mukeibunka.com/stage/stage8/
人の心を揺るがす「語り」の伝統は民衆の中に受け継がれています。そのなかから、仏教の流布にルーツを持ち浄瑠璃的な要素が加味された「説経節」、明治初期に大阪で流行り歌謡曲にも大きな影響を与えた「浪花節」、そして人形を使わない「語り」だけで義太夫の真髄に迫り、大正昭和にかけて一世を風靡した「女流義太夫節」を披露いたします。

〈演目と出演者〉

説経浄瑠璃

「葛の葉(くずのは)」
浄瑠璃:三代目若松若太夫
 
浪花節

「紺屋高尾(こうやたかお)」
浪曲国本武春

曲師:沢村豊子
 
女流義太夫

「卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)[平太郎住家の段]」
浄瑠璃:竹本駒之助

三味線:鶴澤津賀寿

なかでも珍しいのは「説経節」です。「日本音楽大事典」によれば、「説教(説経)とは、本来仏教における伝道の一つの手段であったが、鎌倉、室町と時代を経るにしたがって、説教の内容が平俗化するとともに、節を付けて語られるに至り、寺院の中から街頭に進出、各地に説教を語る僧体の芸能者も現れたらしい。(中略)江戸時代に入ると、さらに三味線をとり入れ、操り人形とも提携して芝居興行を始めた。」とのことです。江戸時代に隆盛をきわめ、多くの説経語りがいたものの、18世紀後半には衰退してしまったそうです。
それでも各地に伝えられていて、今回登場する三代目若松若太夫(わかまつ わかたゆう)さんは、明治期に出て人気を博した初代若太夫がおこした若松派の流れをくみます。その後の歴史とプロフィールについては、三代目若松若太夫さんのお弟子さんが運営するサイト「若松派 説経 若松若太夫」に詳しく出ていますのでご覧ください。

次に登場するのは浪花節浪曲)の国本武春さん。(→公式ホームページ「うなるカリスマ!!国本武春」浪曲師の両親のもとに生まれ、浪曲師として着実な歩みを続ける一方、他の様々なジャンルの音楽とのセッションをはじめ、テレビ、ラジオにお芝居と、多方面で活躍しています。
浪花節は明治初期に生まれ、昭和の前半まで、寄席やラジオなどでたいへん人気がありました。レコードも数多く出ています。いまではラジオやテレビでも耳にする機会が極端に減りましたが、多くの日本人が楽しんできた「語り」をライブで味わうことができます。紀尾井小ホールは邦楽専用ホールですが、意外にも浪花節が出るのは初めて、とのことです。
そして、もう一つの「語り」が女流義太夫人間国宝、竹本駒之助さんです。素浄瑠璃による「語り」の迫力が楽しめることと思います。
昨年5月の、第15回日本伝統文化振興財団賞贈呈式の際の東日本大震災チャリティ公演「古典芸能の夕べ」でも、第4回財団賞受賞者の鶴澤津賀寿さんとともに出演いただきました。胸に迫る「いろは送り」はこちらから視聴できます。

「語る」というテーマによる節の競演。この3つを同時に聴けるのは、東京[無形文化」祭ならではの企画です。
紀尾井小ホールで午後3時からと7時から、昼夜2回公演です。どうぞお見逃しなく!

(Y)