じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

四天王寺の聖霊会@国立劇場

 

この秋、国立劇場四天王寺聖霊会(しょうりょうえ)が紹介されます。チケットが本日一般発売されました。ご関心のある方は、どうぞお早めに! 2階1〜3列の21〜30の30席分に、仮設舞台が設置されるそうです。・・・えっ、2階の中央ブロック最前列から3列分が仮説舞台になる? 今年、四天王寺へ出かけて聖霊会を聴聞してきましたが、どういう設(しつら)えになるのかちょっと想像がつきません。これはとても楽しみです。

四天王寺聖霊(してんのうじのしょうりょうえ)
2012年9月15日(土) 午後2時開演
国立劇場大劇場
出演= 和宗総本山四天王寺
      天王寺楽所雅亮会
入場料金(全席指定・障害者の方は2割引)
【一般】 1等席 4,500円、2等席 3,600円
【学生】 1等席 3,200円、2等席 2,500円
詳細情報→

大阪市天王寺区にある和宗総本山四天王寺聖霊会は、宮中を中心に伝承された雅楽とは異なる趣を今に伝えるもので、これまでLPレコード等でその特徴的な響きには親しんでいましたが、今年の4月、四天王寺聖霊会に出かけて現地で接したことで、──レコードに収録されているのは全体のほんの一部でしかなく、しかも音だけで、肝心の舞を見ることはできません──左右の別棟の楽舎に分かれた雅楽、池の上の舞台、その周囲を飾る巨大な曼珠沙華を模した赤い花飾りなど、この「聖霊会」というものが非常に独特な“空間性”と結びついたものであることを実感でき、その魅力を一層強く受け止めることができました。(→ 2012年04月25日「四天王寺の聖霊会」

  

ただ残念だったのは、強い雨のため石舞台の上で舞が見れなかったこと。舞は六時礼讃堂のなかで行われました。なんと、この三年続けての雨だそうです。聖徳太子が泣いているのでしょうか・・・。来年こそ晴れるように念じて、再び四天王寺へ行こうと思っていたところに、今年の秋、東京・国立劇場で「聖霊会」が紹介されることを知りました。これは大変貴重な機会です。

四天王寺聖霊会の雅楽については、昨年出版された寺内直子さんの著書『雅楽を聴く―響きの庭への誘い』(岩波新書)をお読みになると、理解が深まると思います。何度読み返してもコクがあって香りが漂う、コンパクトな名著として、雅楽に初めて興味をもった方にもお薦めです。


そういえば、1960年代に国立劇場で開始された雅楽舞楽公演の何回目だったかで、四天王寺聖霊会の雅楽を伝承している「雅亮会」が登場して評判を呼んだという記述を見た記憶が・・・。

さっそく「文化デジタルライブラリー」で調べてみました。すると、ありました。昭和44(1969)年10月29日、国立劇場大劇場での第8回雅楽公演が『舞楽四天王寺聖霊会」』でした。

その後、「四天王寺聖霊会」は、CBSソニー東芝EMIからセット物LPとして発売されたこともありました。ソニーが1973年12月発売の『雅楽 四天王寺聖霊会と現代雅楽』(SOJZ-43〜45)()[最後に収録されている現代雅楽作品『雅楽のための換起』は松下眞一さんの作曲]、東芝EMIは1979年10月発売の『日本音楽の魅力を探る(3) 四天王寺舞楽』(TH-60117〜9)()。どちらも平野健次さんの監修なので、リンク先の「平野健次邦楽文庫」で収録内容を確認することができて大変便利です。

  

こうした格別に優れた記録をなんとかCD化して残したい、という気持ちはやまやまなのですが・・・。しかし現実は、今年2月の当ブログで書いたように、今や日本の伝統音楽のCDは殆ど販売が見込めない状況となっております。その傾向は年々急角度で進んでいます。(→ 2012年2月22日 「雅楽 新しき古き響き/木戸敏郎・武満徹」

以前、別の投稿時に書いたように(→ 2011年12月07日「吉増剛造を読む 現代詩の世界」)、当財団は国(省庁)から助成を受けているわけでなく、基本的な活動費は頒布作品の売上でまかなっているため、今の状況は運営に直接響いています。

聞くところでは、これは邦楽に限ったことではなく、タンゴでもカンツォーネでも以前は一定数の愛好家がいて成り立っていた種々な音楽ジャンルで一様に売上枚数が激減していて、国内盤CDをリリースすること自体が難しくなっているようです。なかでも愛好者に高齢者の方が多い分野はダウンロード販売への以降がしづらいという状況もあります。また、邦楽のような元々愛好者の極端に少ない分野では、収益を確保するためにダウンロード料金もそれなりの高い金額に設定しないと実際の参入は難しいかもしれません。私の個人的な印象ですが・・・。

というわけで、今年度はCD販売数の低下という現状を鑑(かんが)みて、当財団におきましても、極力CDの製作数を抑えざるを得ないという状況となっております。(こちらの当財団HP内「新譜」コーナーをご覧いただくと、リリース数が少なくなっていることがお分かりになるかと思います)

その代わりとして(!)力を入れ始めているのが公演の開催です。そうです、このところ当ブログでも何度もお知らせさせて頂いております『第一回 東京[無形文化]祭』(当財団主催)が、本日からいよいよスタートいたします♪♪♪

今夜の公演『ハイチのカーニバル音楽』(今日と明日、19時開演、草月ホール)は、まだ当日券もありますので、ぜひお出かけください!! 民俗芸能との出会いはいつでも一期一会。でもその体験は身体と心にいつまでも長く残ります。CDとは違って五感全体で接していただくことでしか伝わらないものが必ずあります。思い立ったが吉日。皆様のご来場を心よりお待ちしております!

(堀内)