じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

人間国宝、山本東次郎先生

7月20日金曜日、東京[無形文化]祭の韓国珍島からの公演を準備していたところに、「狂言山本東次郎先生が人間国宝に認定された!」とのニュースがとびこんできました。本当にうれしいお知らせでした。東次郎先生、おめでとうございます!

いつだったかもうだいぶ以前のことですが、東次郎先生の演じる「月見座頭」を拝見して以来のファンなのです。ブログにもたびたび(勝手に)登場していただきました。
大人になった虫捕り少年
新緑の国立能楽堂で
文楽「寿式三番叟」と「三番三」
「月見座頭」をDVDで
山本東次郎家の次世代を担う甥御さんの山本泰太郎さんが日本伝統文化振興財団賞を受けられたことなどから、その後、幸運にもお目にかかる機会に恵まれました。いつもすてきな笑顔で、穏やかなお人柄です。が、泰太郎さんの受賞記念演奏会や記念DVDの収録の際には、直前のリハーサルまで非常に厳しく指導されていて、芸に対する厳格なお姿を垣間見ることもできました。
泰太郎さんによれば、山本家の狂言はお客さまを笑わせることを目指しているのではないと教えられたとのこと。面白い仕草やセリフのくすぐりで笑わせるのは存外簡単にできるが、それを安易にやってはいけないと指導されてきたそうです。では何を表現するのかといえば、狂言を通じて、昔も今も変わらない人間の愚かしさを見せるのだといいます。
たしかに狂言では、登場人物の間抜けなところ、欲深いところ、セコいところ、上下関係の逆転や夫婦のおかしなやりとりなどを見て笑いますが、裏返してみればどれも思い当たることばかり。人間のワザの愚かしさ、悲しさでもあります。
「月見座頭」は、とくにそういう面を感じさせる、まさに山本家の得意とする演目だと気づかされます。山本家の狂言の集大成ともいえるDVD「山本東次郎家の狂言(10枚組)」には残念なが「月見座頭」が収録されていないのですが、山本泰太郎さんの日本伝統文化振興財団賞受賞記念DVDでは、泰太郎さんが月見座頭を演じ、東次郎先生がナゾの「上京の男」の役で出ています。ぜひご覧いただきたいと思います。
そして、いよいよ後半に入る今週の東京[無形文化]祭では、24日(火)の「躍る―舞の競演」の公演で、山本泰太郎さんが「三番三」を演じ、東次郎先生は後見で舞台に出られます。これは狂言のなかでも特別な演目で、後見も重要な役割を担っています。こちらもどうぞお見逃しなく。→http://mukeibunka.com/stage/stage7/

(Y)