じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

速報!「語る」―節の競演

弊財団主催、第1回目の開催となりました「東京[無形文化]祭」。初日、7月11日のハイチのカーニバル音楽からはじまり、本日27日、最終公演「語る」―節の競演が、紀尾井小ホールにて開催されました。

窓からの眺めも良い、紀尾井ホールです。
27日も各地で猛暑となり、ちょっと歩くだけでも汗だくになってしまう1日となりました。本日は、昼と夜の2回公演です。

まずは、説経浄瑠璃「葛の葉」。

説経浄瑠璃というジャンルは、私は、はじめて聞かせていただきました。説経浄瑠璃は、説経節ともよばれる語り物の一種で、僧侶が仏典を説いた「説経」にはじまるといわれているそうです。中世には、説経師たちによる語り物としての説経節が確立し、室町時代には「ささら」や「かね」を伴奏とする説経師があらわれます。近世に入ると、三味線、人形遣いと提携し、劇場芸として発展。著名な説経師もあらわれ「三荘太夫」「小栗半官」などの物語を語ったそうです。元禄の末頃から、説経節義太夫節におされ、しだいに衰退してしまうのですが、また寛政の頃、江戸で再興されたそうです。
本日は、三代目若松若太夫さんによる語りです。現在、説経節を伝承されているただ一人の方ということだそうですが、お弟子さんによるホームページも充実。演奏会情報も満載です。本日会場にお越しいただけなかった方も、チェックしていただければと思います。

次は、浪花節「紺屋高尾」。

明治時代に「浪花節」という呼び名で登場した「浪曲」。三味線のリズムと声の魅力、義理人情をテーマとした人間味あふれる物語で、大正の終わりから昭和の初めにかけて、空前のブームが起きたとのことです。ブーム期に、今でいうミリオンセラーとなったレコードが篠田實さんの「紺屋高尾」。神田紺屋町(現在の千代田区、染色業者が多かったそうです。)の染め物職人「久蔵」が、吉原の花魁「高尾大夫」に一目惚れし、3年間でお金を貯めて会いに行くというお話しです。
本日は、二代目篠田實さんから芸を受け継いだ国本武春さんが、その「紺屋高尾」語りました。そのテンポの良い語りで、お客様からも笑いが起きていました。お三味線は、曲師(浪曲三味線奏者)の沢村豊子さん。国本さん語りを聞きながら、絶妙な間合いと音色で、語りを盛り上げていました。

そして最後は、女流義太夫「卅三間堂棟由来[平太郎住家の段]」。

浄瑠璃は、迫力の語りで観客を魅了する竹本駒之助師、そして三味線の鶴澤津賀寿さん。
江戸時代に花開いた様々な芸能や文化の中でも「文楽人形浄瑠璃)」は、日本を代表する世界無形文化遺産となりました。文楽義太夫節は男性によって演じられていますが、女流義太夫は人形がない素浄瑠璃です。出雲のお国以来、女性の芸能活動には様々な制約があり、度重なる禁止令、明治期には「娘義太夫」が大ブーム、その人気ゆえに非難という困難な時代もあったそうですが、現在女流義太夫の演奏会は、上野本牧亭国立演芸場などで聴くことができます。女流義太夫の歴史は、250年だそうです。
本日の演目は、「卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)」という、草木の精が人間と契って子を儲けながら、やがて別れが訪れるという作品です。
見台(譜面台)の見事な細工や、若草色の涼しげな夏用の肩衣など、近くで見ると気付く魅力もたくさんあります。是非、次の演奏会でご覧になってみてください。
それにしても、日本の伝統芸能は、「語り(または歌)と三味線」というジャンルが、たくさんありますね!
それでは、夜になりましたので、夜のホールから。(相変わらずピントぼけていますが…)

(制作担当:うなぎ)