じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

第六十回 藤井昭子地歌ライブ

先週7月27日(金)紀尾井小ホールより、弊財団主催、東京[無形文化]祭の公演、【「語る」─ 節の競演】の速報をお送りいたしましたが、本日は、「藤井昭子地歌ライブat 紀尾井小ホール」速報をお送りいたします。
藤井昭子さんの地歌ライブは、2001年6月25日に第1回目の公演を「新宿たべるな」(ライブホール)で開催以来、「銀座28’s」(日本ビクターショールーム)、「求道会館」(東京都有形文化財・本郷)と場所を移し、12年間にわたり継続されています。
本日は、第60回目の記念公演ということで、紀尾井小ホールでの開催となりました。緞帳のあるホールですが敢えて使用せず、出演者の出入りから見ることが出来るライブ形式で、演奏の前後に恒例の?トークがあります。
(昭子さん)「……本日で60回目ということで、還暦を迎えられたのですか?とご質問いただきましたが、公演の回数でございます。還暦まではまだもう少しございます。(笑)」
と、会場が和んだところで、1曲目は「名所土産」(めいしょみやげ)。

箏:遠藤千晶 三弦:藤井昭子 尺八:藤原道山
本日のテーマは、地歌の歴史に名を残す検校・勾当(けんぎょう・こうとう=中世、近世における盲官の位。検校は最高位。)の作品を取り上るシリーズの4回目。「地歌手事物の金字塔〈三役物〉」と題し、大阪系地歌の許し物制度上で、最高位の3つの大曲=三役物(さんやくもの)が演奏されました。
「名所土産」は、作曲者不詳。住吉を出発し、奈良から宇治に至る間の名所を訪ね、土産話に語ろうという趣旨の歌詞とのことです。現在では聴く機会が少ない曲で、今回、演奏する機会を頂戴し勉強させていただきましたとおっしゃっていた遠藤千晶さんと、藤原道山さん。(演奏後、楽屋にて。)

2曲目は、三つ橋勾当作曲「根曳の松」(ねびきのまつ)。お正月の最初の子(ね)の日に、野生の小松を庭に移し植えて、千代を祝福する「子の日の遊び」にちなみ、おめでたい気分を表現した歌詞の内容となっており、ご祝儀曲の中でも筆頭に位置する曲です。曲の長さも30分近くあります。

三弦替手:藤井泰和 三弦本手:藤井昭子 尺八:徳丸十盟
藤井昭子さんのお兄様の藤井泰和師と、尺八の徳丸十盟師との演奏は、息ピッタリの「根曳の松」…。お笑い系?の空気を感じるトークの掛け合いも、息ピッタリです!重厚な雰囲気で終わった演奏の後でしたので、笑ってもいいのかしら、と辺りの様子を窺われたお客様もいらっしゃったのではないでしょうか。

トークを終えて。楽屋にて。)
そして3曲目は「松竹梅」。同じく三つ橋勾当作曲。ご祝儀物の大曲として「根曳の松」と双璧をなす存在、という曲です。この曲を契機に許し金(教授料)を納める「許し物制度」が生まれたと伝えられているそうです。

箏:福田栄香 三弦:藤井昭子 尺八:善養寺惠介
九州系地歌演奏家として、同じような境遇を過ごされてきたという福田栄香さんと藤井昭子さん、そして古典尺八曲を伝承されている善養寺惠介さんとの共演です。第50回記念演奏会の時も「八重衣」で共演されたお三方で、本日は、スピード感溢れる「松竹梅」の演奏でした。

(演奏を終えられ、楽屋廊下にて。)
ところで本日8月4日は、藤井昭子さんの祖母、阿部桂子師の命日とのことでした。ご祝儀物の大曲2曲を演奏することになりましたが、演奏することがご供養になるとおっしゃっていました。阿部桂子師のお誕生日は、明治33年3月3日で、ご葬儀は平成8年8月8日に行われたそうです。覚えやすい!?ですね。

演奏会終了後、ロビーで。
以上、速報でした。

(制作担当:うなぎ)