じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

イタリア録音日記 1

4日間という超タイトなスケジュールでイタリアに出張してきました。後藤すみ子先生のCD録音のためです。
後藤すみ子先生といえば生田流の箏と三味線の演奏家ですが、なぜイタリアで録音なのかといえば、ヴェネツィア近郊に在住のチェリスト、マリオ・ブルネロさんと「春の海」を共演することになったからです。

「春の海」はもともと尺八と箏の合奏曲ですが、宮城道雄がヴァイオリンのルネ・シュメーと合奏したことで広く知られたのはご存じの方も多いと思います。フルートと箏の合奏も人気でよく演奏されますが、今回は後藤先生のたっての希望で、チェロとの合奏が実現することになりました。
お相手は世界屈指のチェリスト、マリオ・ブルネロさん。多忙なブルネロさんのスケジュールに合わせて、彼の住むイタリアのヴェネト州まで、はるばる録音に出かけたというわけです。

マリオ・ブルネロさんは、1960年イタリア、ヴェネト州カステルフランコ生まれ。今もこの小さな街に暮らしています。86年にイタリア人として初めてチャイコフスキー国際コンクールに優勝し、批評家特別賞、聴衆賞を受賞。初来日の87年以降、たびたび日本を訪れてコンサートを開き、NHK交響楽団や紀尾井シンフォニエッタ東京とも演奏しています。現在、世界一流の指揮者や演奏家たちから共演を望まれる、実力派のチェリストとして活躍しています。
今回は4日間といっても、カステルフランコにはほぼ2日間だけ滞在という日程。
ところが、初日の夜遅くヴェネツィアの空港に到着するも、トランジットで荷物の引き継ぎがうまくいかず、次の便でスーツケースは着いたのに肝心のお箏が到着しないという事態に! ほとんど眠れないまま翌朝空港でお箏に無事再会し、2日目は会場の下見とリハーサル。
3日目に城壁の中のオペラ劇場で録音を済ませ、その翌日は早朝に空港に向かって帰国というハードスケジュールでした。80歳を迎えた後藤先生は、お箏が着くまではさすがに心配されていましたが、終始お元気でした。

録音の会場、カステルフランコのオペラ劇場は、ブルネロさんが15歳のときにチェロ奏者としてデビューし、音楽人生をスタートさせた思い出深い場所なのだそうです。
ブルネロさんには予め「春の海」の楽譜を送ってありましたが、お二人が合奏するのは現地でのリハーサルが初めて。しかしながら二人の豊かな音楽性と技量が相まって、すばらしい演奏となりました。チェロの低音の響きがお箏ととてもよく合うことも発見でした。

もう1曲、後藤先生のリクエストで箏とチェロのための「幻想の平城山(ならやま)」(平井康三郎作曲、平井丈一朗編曲)も収録しました。
早く皆さんにお聞かせしたいのですが、この2曲の入ったCDは、来春発売予定です。楽しみにお待ちください。

収録後の記念撮影。左から録音エンジニアの服部文雄さん、藤本、後藤先生、高畑美登子さん。

(理事長 藤本)

関連リンク
八十歳の「手事」 - じゃぽブログ