じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

10/27(土)、田中泯が舞う。

こどもたちのいじめに関連した事件の報道が止まりません。これまで報道されなかった事例や、もみ消されて誰にも知られることのなかった深刻な事件もおそらくあったはずで、あるいはまた事件や事故とはみなされない、いわゆるいじめはそれこそ無数にあったし、今もあるはずです。

朝日新聞が、今年の春から、いじめについてのエッセイを掲載しているのは時々目にしていましたが、あるときふと目にした田中泯さんの記事が忘れられません。今、その記事について検索してみると、やはりネット上でも話題になっていたようです。田中泯さんの本を出版している工作舎のサイトによれば、――「twitterfacebookには共感する声、声、声! facebookのおすすめが1万にせまる勢いと、この連載で随一の反響となった。」――とあります()。

タイトルは「今の自分、カッコいいか」。全文はこちらです。→ <朝日新聞デジタル「いじめを見ている君へ」田中泯さん>


わたしが今年読んだ本のなかでも、特に印象的だった一冊が、田中泯さんのエッセイ集『僕はずっと裸だった』工作舎)です。自分自身がどのような存在でありたいのか、とあらためて考えたとき、私は、田中泯さんの生きる姿勢から大変に勇気づけられ、また同時に覚悟を迫る厳しい緊張感も与えられます。農業をやり、踊りをやる。生活をして、表現をする。そうした田中泯さんの生き方は、ほんとうに自然体になるとはどういうことなのかを教えてくれます。

(この本が私に強い感動を与えるもうひとつの大きな理由は、この本で田中泯さんが毎回エッセイを書く際に対峙しているのが、田中さんの踊りをずっと撮り続けて2006年に逝去されたカメラマンの岡田正人さんの写真であり、私は、もうずっと以前ですが、ほんの少しの期間、岡田さんと接する機会に与(あずか)ったという思い出があるためです)

岡田正人写真展「田中泯 地を這う前衛」
2008年2月23日〜3月3日(コニカミノルタプラザ) ※以前開催された展覧会の記録


自然体であるということはどういうことか。たぶん、その答えはひとりひとり違っているのだと思います。では私が受け取った「自然体であること」とは何かといえば、それは、柔らかく受け止め、同時に鋭敏であるということです。たとえば、地球が宇宙空間を猛烈なスピードで移動している気配を五感全体で察知して、その「音」に耳をすますような、そんな状態に近いものであるような気がしています。そうした状態に向かいたいという気持ちが、自分のなかのどこかにきっとあるのだろうとも思っています。


国際文化会館から頂いた情報で、田中泯さんの踊りの公演についてお知らせいたします。

■IHJ ガーデン・コンサート■
越境:田中泯、国際文化会館の庭園を踊る
2012年10月27日(土)3:00 pm(開場=2:30 pm)
国際文化会館 庭園
会費: 3,000円(30歳以下、会員:2,000円)
上演時間 約1時間
 ※上演時間はおおよその目安です。
協力: アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)、工作舎慶應義塾大学アート・センター
<雨天決行>


あの素敵な庭園、かつて多度津藩(現・香川県丸亀市)藩主の京極壱岐守の江戸屋敷だった、あの庭を舞台にして田中泯さんが踊る……! 「場所」が田中泯さんの身体と交感するなかで、ある力が漲ってきてついにはドライブする(突き抜ける)。身体は、停まっているかのようにゆったりと光になじみながら、同時に、風を切るように迅速に動く。その「瞬間」の連続、あるいは「持続」の刹那をぜひ見に…いや違う、全身で体験しに行きたい! と切に思うのですが…、私はこの日、仕事で東京にはいられない身なのでした。無念。

しかもあろうことか、この10月27日(土)は、群馬交響楽団の定期で、井上道義さんの指揮、児玉麻里さん、児玉桃さんのピアノで、三善晃さんの四手ピアノとオーケストラのための「樹上にて(SUR LES BOIS)」(1989/rev.1993)が演奏されるのです。2009年に出版されたスコアは1993年に小編成用作品として改訂されたヴァージョン。この日演奏されるスコアはオリジナル版なのか改訂版なのか気になる。でも当然、これも聴きに行くことができない……嗚呼()。まあ、人生、そういう巡り合わせの日もありますねぇ…。


四国・徳島で翌10月28日(日)朝から開催される「平成24年度(第21回)ビクター吟友会 吟剣詩舞コンクール 全国決勝大会」(当財団後援)を、<ビクター吟友会総本部 事務局長>としてぜひとも成功させるべく、沢山のお力添えを頂きながら、日々奮闘努力を重ねています。大会は入場無料なので、徳島近郊で詩吟にご関心のあるかたは、ぜひお越しくださいませ!

※そういえば、三善晃さんの「樹上にて」では、たしか阿波踊りのモチーフが登場するのだった…。

(堀内)