じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

箏歌と歌曲の出会い

日本の歌曲と歌謡を演奏する会の第1回公演「Vol.1 箏歌と歌曲の出会い」に行ってきました(2012年10月3日、渋谷区立文化総合センター大和田 伝承ホール)。

企画された音楽・舞台プロデューサーの山崎篤典さんがプログラムに寄せた文章によると「おなじ日本語で歌われる日本歌曲と伝統声楽曲。実はこの両者の間には、大きな違いがあります。発声法、間の取り方、メリスマ、歌詞の扱い方など歌唱法の違いは歴然です。しかしおなじDNAを持つ日本人が日本語で歌うわけです。両者の違いなど、本当は小さいものなのでしょう。」
今回は箏歌をとりあげて、日本歌曲と聞き比べるという内容でしたが、たしかに水と油というよりは、どちらも日本語の歌詞がよくいかされた歌唱で、その違いを楽しむことができました。
最後に出演者全員で演奏された「枕草子〜和洋歌絵巻」はこの会のために池上眞吾さんに委嘱された作品ですが、箏歌、テノール、ソプラノが自然に組み込まれ、楽器も箏、胡弓、尺八、ピアノがとけあって、「歌絵巻」というのにふさわしいものでした。ぜひ再演の機会をと思います。

【プログラム】

第1部 箏歌の世界
「千鳥の曲」(古今和歌集金葉和歌集より・吉沢検校作曲)
 帯名久仁子(歌・箏) 池上眞吾(箏)藤原道山(尺八)
「水の変態」(高等小学読本巻四より・宮城道雄作曲)
 帯名久仁子(箏本手) 池上眞吾(歌・箏替手)

第2部 歌曲の世界
「花のかず」(岸田衿子作詞・木下牧子作曲)
 楠田翔子(ソプラノ) 澤潟雅子(ピアノ)
「ひとりぼっちがたまらなかったら」(寺山修司作詞・大中恩作曲)
 田中誠テノール) 澤潟雅子(ピアノ)

第3部 宮城道雄作品歌いくらべ
「こすもす」
 箏歌:帯名久仁子(歌・箏) 藤原道山(尺八)
 歌曲:楠田翔子(歌) 池上眞吾(箏) 藤原道山(尺八)

第4部 歌曲と歌謡の世界
枕草子〜和洋歌絵巻」(清少納言枕草子」より 池上眞吾作曲・委嘱初演)
 帯名久仁子(歌・箏・胡弓) 池上眞吾(歌・箏)
 田中誠テノール) 楠田翔子(ソプラノ)
 藤原道山(尺八) 澤潟雅子(ピアノ)

[企画とお話]山崎篤典

山崎さんによれば「今回、双方の演奏を聴き比べ、また協働(コラボレーション)することで相互理解し、特に若い声楽家にとって日本語歌唱のヒントをつかんでもらえればと思いました」という企画意図もあるそうです。
会場には邦楽の演奏会には足を運んだことがないという方も多かったようですが、歌い手をはじめ尺八の藤原道山さんやピアノの澤潟雅子さんなど出演者全員のお話を聞く場面もあり、アットホームな雰囲気でした。
また、歌曲の例としてとりあげられた木下牧子さんと大中恩さんの作品が、とても素敵な日本語の詩を生かした曲で、邦楽ファンにも面白いプログラムでした。
寺山修司作詞・大中恩作曲の歌曲集「ひとりぼっちがたまらなかったら」はこちらのCDに入っています。全曲聴いてみたくなりました。

じゃぽ音っと作品情報:大中 恩 愛の歌曲集 Ⅱ ひとりぼっちがたまらなかったら /  水野賢司、古元麻結美

(Y)