じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

木下保と信時潔

先週のブログでは、秋に開催されるたくさんの演奏会についてご紹介いたしましたが、合唱の演奏会もたくさんありますね。
明日11月11日(日)に、練馬文化センター大ホールにおいて「慶應義塾ワグネル・ソサィエティーOB合唱団 定期演奏会2012」が開催されます。

慶應義塾ワグネル・ソサィエティーは、創立1901年とのことで、とても歴史がある合唱団です。このブログでもたびたびご紹介しているテノール歌手、木下保先生は、1927年(昭和2年)6月に、初めて合唱指揮者として、慶應義塾ワグネル・ソサィエティーの第42回定期演奏会を指揮されたそうです。テノール歌手としては同年5月に、新交響楽団(現N響)「ベートーヴェン没後百周年記念演奏会」で、第九のソリストとしてデビューされています。木下先生については、過去ブログでご紹介させていただきました。「テノール歌手 木下 保先生(1)」「(2)」「(3)」「(4)」「(5)」「(6)」「(7)」「(8)」
今回のワグネルOB演奏会では、木下保先生が1982年11月に逝去されて没後30年に当るということで、戦前・戦後を通じて指導を頂いた木下先生を偲んで、信時潔作曲、清水重道作詩、木下保編曲の男声合唱組曲「沙羅」を演奏するということです。この「沙羅」は当初、畑中良輔先生の指揮で演奏することになっていたそうですが、畑中先生が本年5月に急逝されため、団員の方が指揮をされることとなったそうです。
また木下保先生が信頼をよせていた作曲家、1887年生まれで今年2011年に生誕125年を迎える信時潔先生。11月23日(祝)には、津田ホールで「生誕125年・信時潔とその系譜」が開催されます。洋楽文化史研究会主催(実行委員長 大中恩)によるこの演奏会は、黎明期の日本の音楽界を、作曲家そして教育者として牽引した信時潔の生涯と、信時潔に薫陶を受けた作曲家の今日に至る創作のいとなみを、作品演奏から再考する企画とのことです。演奏会は、第一部で器楽作品、第二部で声楽作品が取り上げられ、また演奏会プログラムは充実の内容とお聞きしており、小論なども掲載される予定とのことで、研究されている方々にとっては、それも楽しみですね。


弊在財団から出ているこちらのCD『木下保の藝術〜信時潔、團伊玖磨 歌曲集〜』(◆)(2011年発売)では、洋楽文化史研究会の戸ノ下達也さんが執筆された解説が充実しております。

また、『SP音源復刻盤 信時潔作品集成(6枚組)』(2008年発売)では、「沙羅」「海道東征」「木の葉集」など全111曲を収録。信時潔先生のお孫さん信時裕子さんによる全144ページの解説書が付属しております。資料としても是非お手元に置いていただきたい6枚組セットです。


(制作担当:うなぎ)