じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

日本舞踊×オーケストラ/伝統の競演

 
12月7日(金)19時・東京文化会館「日本舞踊×オーケストラ ─伝統の競演─」という大変ユニークな公演が開催されます。これは日本舞踊の花柳壽輔さんが総合演出を担当する、東京文化会館の主催公演。チラシにあるように、「衝撃の出逢い!オーケストラで舞う日本舞踊。」というキャッチがその内容を一言で表しています。選ばれた演目は、元々はクラシックのバレエのために作曲・編曲された名曲群──「レ・シルフィード」(ショパン)、「ロミオとジュリエット」(プロコフィエフ)、「ペトルーシュカ」(ストラヴィンスキー)、「牧神の午後」(ドビュッシー)、「ボレロ」(ラヴェル)。

 

日本の文化は、歴史のはじめから外来文化を輸入して影響を受け、そうした外来文化との間で相互に変容を重ねながら、結果として独自の洗練に至るという傾向があるわけですが、しかし、重力に反して上方へ向かうバレエと、重力と親しみながら舞う日本舞踊では、融合も反発もちょっと想像がつきません。むしろ、もっとなにか別なものが生まれる可能性がありそうです。これはじつに興味深い挑戦。

チケット発売前の今年6月頃にこのチラシを手にして、「きれいなデザインだな」とずっと持ち歩いていたのですが、迂闊にも9月の時点でチケットは全席(2,303席)ともすでに完売だったことを最近知りました。うううん…

こちらが公演の公式サイトです(東京文化会館ホームページ内)。→

今年6月28日に花柳壽輔さんと井上八千代さんが出席して行なわれた、本公演の記者会見の模様のレポートはこちら(「おけぴ管理人の観劇感激レポ」内)。→


今月初旬に、月刊「日本舞踊」11月号の巻頭カラー見開きページで花柳壽輔さんのインタビューが載っているのを読んで、「あっ、そろそろチケットを買っておかないと」と思っていた頃には、いずれにしても完売だったわけで。この種の公演はのんびりしていたら駄目ということなのですね。この記事の中で、本公演の「ボレロ」への出演依頼を受けた野村萬斎さんが、同じ日に別の会場で本番舞台があるにも関わらず、どうしてもこのオーケストラとの競演に参加したいと考え、出演時間を調整する話が印象的。というか、なんだかパンクな感じ…。野村萬斎さんは2011年に世田谷パブリックシアターボレロを独舞で舞っていますが、今回の舞台では群舞とのこと。さあ、何が起こるのか、どうなるのか、楽しみです。


ところで「ボレロ」といえばモダン・バレエの巨匠モーリス・ベジャール(1927-2007)の振付がなんといっても一番有名でしょう。バレエがお好きな方同士であれば、「どの踊り手のボレロが好きか」というのが挨拶代わりになるほど。世界でも十人ほどしか踊れる者がいないとか。

わたしはバレエにはさっぱり疎いのですが、最近、じつに遅ればせながらですが、バレエ界の生きる伝説、人気、実力ともにバレエ界の頂点を究めたシルヴィ・ギエムの存在を知って心底衝撃を受けました。本来なら引退している年齢にも関わらず、いまだに舞台に立って世界中の人々を魅了。人間離れした完璧な容姿と体型(骨格と筋肉)、そして「天才」と称される神の領域にある稀有な技術に加え、怜悧で聡明な知性と広い人間性を併せ持った百年に一人のダンサー、そして芸術家。彼女は東日本大震災後に日本を励ますために来日し、福島県をはじめとする日本ツアーでギエムの代名詞ともなった「ボレロ」を踊りました。年齢を感じさせないその舞台は日本中の舞踊ファンの目と心を釘付けに。

上記の月刊「日本舞踊」のインタビューにもあるように、花柳壽輔さんが今回の公演を思い立ったのは、昨2011年にシルヴィ・ギエムと同じ舞台に立った時の体験がきっかけになっています。(記事画像をクリックすると別ウィンドウで読めます。)

野村萬斎さんの「ボレロ」は今回チケットが取れず、観ることが叶いませんでしたが、しかしきっと何かが起こる予感があります。オケ伴奏で日本舞踊でバレエ作品を舞う、という、なにしろまったく前例がない試みだけに、画像も動画も参考になるものがこの世にありません。

その代わりに、シルヴィ・ギエムの「ボレロ」の動画をもう一度。これは2009年の来日公演の模様だと思います。東京バレエ団との共演。(シルヴィ・ギエムは1965年2月25日生まれ。この年齢でボレロを踊ること自体、バレエの世界では普通ならば有り得ないこと。逆に、年をとっても、いやむしろ年をとってこそ深い味わいが出てくる日本舞踊とはまったく異質な芸術世界。)

(堀内)