じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

旧朝倉家 紅葉と文化の調べ@代官山

去る12月2日に旧朝倉家住宅(重要文化財・東京都渋谷区)にて『紅葉と文化の調べ(お箏の演奏会とお茶席)』が催されました。お天気が曇りだったのが残念ですが、代官山近く旧山手通りすぐ裏にある朝倉邸は、自然と静寂に包まれたとても素敵な場所でした。朝倉邸は大正8年東京府議会議長や渋谷区議会議長を歴任した朝倉虎次郎によって建てられたそうで、関東大震災や太平洋戦争を耐え抜き今もその古く美しい姿を誇っています。都心にありながら、住宅と庭園を含め敷地総面積5,419.81平方メートルという広さは、なかなか体験する機会がないかと思います。

朝倉氏は材木問屋で働いた経験があったので、材木には目が利くと同時に、家屋の木材には細部にまで意匠をこらしたようです。和室のあらゆる所に使われている木材はその板目や柾目がきれいに整っておりましたし、廊下のガラス戸のサッシまでも金属ではなく細やかな肌目の木材でできており、素人目にも微細なところにまで気遣った様が伺えました。お茶席にもお邪魔しましたが、お茶室の障子を開け放って見える風景は、まさにもみじの錦。邸宅の中は和装の方も多く、ちょっとした異世界の趣です。

<旧朝倉家住宅・母屋>

さて、今回お箏の演奏は生田流筝曲、宮城社の大師範でいらっしゃる身埼充(みさき みつる)先生とその生徒さん等による演奏でした。プログラムは以下。

1.木もれび
2.北国雪賦
3.日本の四季(赤とんぼ、鞠と殿様、等童謡)
4.川の流れのように
(楽器:箏・三弦・十七弦)

<演奏が始まる直前の風景>

老若男女に親しみやすい曲を中心に構成され、童謡と「川の流れのように」は観客が演奏に合わせて歌うという趣向。休憩時間には子どもを中心に希望者に箏を弾かせてくれたり、箏の譜面を見せてあげたり、お客さんから箏についての質問があると丁寧に答えてくださる風景が見られました。演奏中に十七弦の絹糸が切れるアクシデントもありましたが、それについても後に先生の説明があり、観客がいかに環境にデリケートな楽器なのか知る機会となりました。

ワークショップさながらの、演奏会。名演奏をホールで聴くのもいいものですが、演奏者に手の届く距離で聴くアットホームな演奏会もよいもの。古民家での心落ち着くひと時でした。