じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

ロバの音楽座30周年コンサート・森のオト

先月の話になりますが、中世・ルネッサンス期の楽器による演奏会を聴きにいく機会に恵まれました。こども向けのコンサートで、その名前も『ロバの音楽座30周年コンサート・森のオト』。場所は原宿VACANT。こじんまりしたライブハウスのような空間です。プログラム全体がストーリー仕立てで、森や、森に棲む虫たちに教わった曲を奏でるところからはじまります・・・・アニメーションや劇も交えた、めくるめくファンタジーの世界でした。

<演奏会が始まる前の様子:子供たちが一番前の席に座れます。敷物の上で自由な姿勢で楽しめるようになっています>

さて、ロバの音楽座についてですが、NHK教育「パンツぱんくろう」「からだであそぼ」などの音楽を担当したり、ジブリ作品「ゲド戦記」の音楽に参加したりしているため、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、端的に表わしますと「西洋古楽器の演奏でこどもたちに音楽の楽しさを伝える楽団」ということになるかと思います。

古楽器というとどんなものを思い浮かべますでしょうか?一番ポピュラーなのはリコーダー。そして、チェンバロヴィオラ・ダ・ガンバは知っている、という方もいらっしゃると思います。実際には、もっとたくさんの楽器があって、今回はその中の一部を見て聴いて楽しむことができました。古楽器はなかなか奇想天外な形のものが多く、傘の杖にしか見えないもの(クロムホルンというそうです)、蛇のような形をした楽器(セルパンという楽器。下写真をご覧ください)等、まず目で見てびっくりしますが、これがどうして、とてもよい音を出します。

<セルパン>

どうして古楽器は今に伝えられていないのだろう?そう疑問に感じながら、ロバの音楽座のホームページを眺めていたところ、私なりの理解ですがその答えが見つかりました。中世・ルネサンス期の音楽は庶民中心のものだったそうです。しかしバロック時代と呼ばれるようになった頃から、次第により高度なものに、洗練されたものに、そして上流階級のものに変化を遂げました。そうして今の西洋クラシック音楽の礎となったのはとても良いことなのですが、一方でそれまでの民衆的な音楽はきちんとした体系の中で継承されることなく廃れてしまったようです。日本の伝統文化はそうなってはいけないですね・・・。

心地の良い音。素材は木であったり、牛の角であったり、貝であったりと身近で自然にあるもの。その音は、木の管の中を演奏者の息が通って行くのが感じられるような、温かみのある音。中世の時代、きっと大人も子どもも純粋に「生活の中での楽しみ」として音楽を奏でていたのだろうな、とその様子が目に浮かぶようでした。音楽って(理論など難しいことがわからなくても!)とにかく楽しいもの・・・。そんな当たり前のことを思い出させてくれました。

◆ロバの音楽座さんのHP

(弘)