じゃぽブログ

公益財団法人日本伝統文化振興財団のスタッフが綴る、旬な話題、出来事、気になるあれこれ。

髭のはなし

正月三が日は間もなく過ぎ、明日4日が「仕事始め」となる方々もたくさんおられることと存じます。
今日の東京は予報通り寒さが戻り、人気の少ない都心の当財団の屋外は夜に入りだいぶ冷え込んで来て、すでに2℃よりも下がって来ています。

本日のブログは、私が何故このようにむさくるしく髭を伸ばしているか。その由来をみなさまにお話したいと思います。


当財団設立基金元のビクターエンタテインメント株式会社(VE)は、1987年に迎えた創立60周年記念事業として、横浜工場に保存していたSPレコード金属原盤のすべてをアーカイブする記念事業を行いました。
戦前から現在まで、つまりSPレコード時代からCDアルバムの今日まで経営母体が変わらずに存続している日本のレコードメーカーはVEのほかにコロムビア、キング、テイチク、そしてポリドールを擁していたユニバーサルがありますが、その後SPレコードアーカイブを積極的に推進するメーカーはなく、また一方、大正、昭和を通じてSPレコードを製造していた数多くのメーカーは戦後その姿を消しています。

SPレコードをリアルタイムで聴いたのは、1950年生まれの私が恐らく最後の世代となるのではないでしょうか。
SPレコードを再生する「蓄音器」の1号機は次の写真をご覧ください。


さて2005年の春ころ、それまで長いあいだ頭の中でまとまらずにいた考えが、東京新聞の取材をきっかけとして「日本のSPレコード音源すべてをアーカイブする」と言うはっきりとした目標に変わりました。

翌2006年には、音楽に関する資料のデジタル保存についての調査研究が文化庁予算で実施され、SP原盤のアーカイブに同年の事業計画として取り組んでいた(社)日本レコード協会をリーダーとして、2007年4月27日に「歴史的音盤アーカイブ推進協議会(HiRAC:Historical Records Archive Promotion Conference)が設立されました。
http://www.riaj.or.jp/release/2007/pr070427.html


さらに2009年からは、国立国会図書館がSP原盤のアーカイブをデジタル資料保存の一環として受け入れてくださることが決まりました。国会図書館では、当初約2,500音源を公開の後、2011年6月末には約18,000の音源を追加公開し、最終的は約50,000音源が公開される予定となっています。
詳しくはこちらのHPを。(http://dl.ndl.go.jp/ja/rekion4Lib.html
現在では全国の公立図書館に加え、ドイツ・ケルン日本文化館図書室での試聴も行われるようになりました。


さて、お話を「髭」に戻します。


この数年にわたる当財団の活動の場で、「SPレコード原盤のアーカイブが終了する日まで、髭を剃らない」と公言してきてしまったのです。

残るSPレコードは、たぶん(と言うのは、日本におけるSPレコードの「総合カタログ」というものが存在しないため、はっきり何枚あるのか、実はよく分らないのですが・・)50,000曲くらいでしょうか?

それが集められるまで剃れない、となると、ずーっとこのままかもしれません。


さて、終わりにちょっと悲しい話ですが、国会図書館でのアーカイブは今年の3月で終了となります。

国会図書館が年間約3500万円の予算化をして下さって、この4年間合計1億4千万円の費用で進めて来られたSP盤アーカイブは、今年4月以降、残る5万曲の収集公開がまさに暗礁に乗り上げているのです。

本ブログの読者の皆さまにも何か良いプランがありましたら、是非ともお教え下さいますよう伏してお願い申し上げます。

(理事長 藤本)